2
小松に何度も何度も角度を変えてキスをされる。 甘くて柔らかなキスに、身体の芯まで蕩けてしまうほどの安堵感と幸せを感じる。 ふたりでしっかりと抱き合って、ゆきは心から充たされていると感じる。 大好きなひととキスをする。それだけでとっておきの幸せを感じた。 幸せすぎてどうして良いのかが分からない。 幸せで、幸せでしょうがない。 大好きなひととキスをするのは、この世の天国だと思った。 ようやく唇を離されたが、ゆきはまだとろんとしていた。 気持ちが良い。 「……ゆき、花火大会、見るんでしょ?さあ、準備をしようか」 小松に柔らかく諭すように言われて、ゆきはもっとキスをして欲しいという想いを引っ込めた。 「……ゆき、さ、そんな目をして、私を煽らないでくれる?君も花火大会どころではなくなるよ」 小松の透明感のある艶やかな言葉に、ゆきは真っ赤になりながら頷いた。 折角だから花火は見たい。 だがそれ以上に、小松が欲しいだなんて、ゆきは恥ずかしくて言えなかった。 ベランダに準備を終えると、猫がタイミング良くやってきた。 愛らしく鳴く猫に、ゆきは思わず笑顔になる。 「こうしてベランダで花火を見るのも良いですね。猫と一緒にいられますからね」 「そうだね、それもまた自宅花火の醍醐味かもしれないが……」 小松はフッと微笑むと、猫を膝の上に乗せて優しく撫で付けた。 気持ち良さそうに喉をゴロゴロと鳴らす猫を見つめながら、ゆきはほんのりと猫が羨ましくなった。 本当に小松は猫にたいしては、純粋に優しかった。 ゆきに対しても優しいが、いつもほんのりと意地悪が入っている。 甘い意地悪ではあるが、猫が羨ましくなる。 「……どうしたの?猫がそんなに羨ましいの?」 「羨ましいです……」 ゆきが素直に言うと、小松は喉を鳴らして笑う。 「……だったら、君も私の膝の上に乗れば良いよ」 小松はさらりと言うと、猫を下ろして、膝を空けた。 「さ、おいで」 いきなり大胆なことを提案してくる小松に、ゆきは喉がからからになってしまうぐらいにドキドキしてしまう。 こんなにドキドキしてしまうと、ゆきは本当にどうしようかと思ってしまう。 耳まで真っ赤になるぐらいに恥ずかしい。 恥ずかしいけれども、ゆきは膝の上に乗りたくなる。 だが、心臓がうねり声を上げていて、うまく出来ない。 ゆきは鼓動がおかしくなり、上手く呼吸が出来なくて、それ以上何も言えなかった。 「……どうしたの?来なさい」 小松は、折角、膝の上を空けてあげたのにとばかりに、ゆきには命令口調で呟く。 行きたいのは本音だけれども、上手く出来ない。 「あ、あの、わ、私っ……!」 ゆきがあわわとしていると、小松はいきなりゆきの腕をつかんで膝の上に乗せさせる。 「……あ、あのっ……!!!」 ゆきは狼狽えながら、真っ赤になってしまう。恥ずかしすぎて、小松をまともに見ることが出来なかった。 「……小松さん……」 「素直になったらどうなの!?」 小松に鋭く言われて、ゆきは返す言葉がない。 「……なんてね……。分かってるから、ちゃんと私の膝の上に座りなさい……」 「……はい……」 ゆきはもじもじとしながら、小松の膝の上に座り直した。 「……良い子だね」 小松にしっかりと抱き抱えられて、ゆきは恥ずかしいけれども、とっても幸せだった。 「……間もなく花火が始まるね」 「そうですね」 「ゆき、お腹空いた?」 「そんな余裕は……」 そこまで言って、お腹が空腹を訴えていることに気がついた。 「……やっばり、お腹が空いていたみたいです」 「そ、じゃあ食べようか?」 「ひ、膝の上で座ったままだと、落ち着いて食べられないです……」 流石にこの状態だと、きちんと食べることが出来ない。 ゆきは胸がドキドキし過ぎて、お腹が空いているのに食べられない。 「……しょうがない子だね。下ろしてあげるよ」 ゆきの反応を楽しむかのように言うと、小松は膝から下ろしてくれた。 ホッとしてはいるものの、何だか物足りないような気持ちにもなる。 ゆきは椅子に腰をかけると、飲み物を口に含みながら食事を始めた。 ごはんを食べていると、花火が始まる。 花火が始まってしまうと、ゆきはそちらに夢中になってしまった。 ごはんを食べるよりも、花火を見つめるほうが忙しい。 本当に夜空に輝く大輪の花火は美しくて、ついうっとりと見つめてしまう。 「……ゆき」 ふと小松に名前を呼ばれて、ゆきは見つめられているのに気がついた。 花火よりも自分の顔を見つめてくれている。 嬉しさと照れで、ゆきはドキドキしてしまった。 小松の綺麗な瞳に見つめられると、ドキドキが止まらない。 「……た、帯刀さん……?」 「花火よりも、君の百面相のほうが、見ていて余程面白いけれどね」 小松は意地悪な笑みを浮かべながら、ゆきをからかうように見つめている。 「……そ、そんなの、知りませんっ。私、百面相なんかじゃないですからっ」 ぷくりと頬を膨らませても、小松は喉を鳴らして笑っているだけだ。 それがゆきには気に入らなかった。 「怒っていないで花火でも見たら?」 「言われなくてもみます。帯刀さんのイジワルっ!」 ゆきがいくら拗ねても、小松は面白がるだけだった。 悔しくて、ゆきはわざと花火に集中する。 すると小松の顔が項に、近づいてきた。 項に小松の吐息がかかる。 「……やっ……」 つい甘い声を上げてしまい、ゆきは肌を震わせた。もう花火のことなんて考えられなくなる。 「……見るんでしょ、花火……」 小松は意地悪な声で囁きながら、ゆきの項に唇を押し付けてきた。 体温よりもほんのりと冷たい唇が押し当てられて、ゆきは鼓動を速めた。 「……花火が……」 「……花火は見られるでしょ?楽しめば良いよ」 小松は首筋を唇で吸い上げながら、手を浴衣の袷に持ってくる。 そのままソフトなのに強引に袷から手を差し入れた。 胸元を直に柔らかく触れられる。 「……帯刀さんっ…!!」 ゆきが声を震わせながら大好きなひとの名前を呼ぶと、更に胸に触れられる。 「……ゆき、私を煽ってるの?」 「……煽ってなんか……」 小松のイジワルで甘いイタズラに、ゆきは身体の奥がとろかされる。 「……花火が……」 「……花火なんかどうでも良いでしょ?私だけに集中したら良い……」 小松は低く艶のある声で囁くと、ゆきを更に熱い世界へと誘った。
|