*花火の夜*


 小松はゆきを再び膝の上に乗せると、楽しむように、焦らすようにゆきの胸元に深く手を入れてきた。

 首筋にはキスの雨を降らされて、ゆきは身体の芯まで震えてしまう。

「……帯刀さん……」

 小松が与えてくれる愛撫以外は何もいらないとすら思ってしまう。

 自分が今、何のためにこの場所にいるのかを、ゆきはうっかり忘れてしまった。

「……ゆき、君は……、和服がよく似合うね……。首が長くて、項が綺麗だからね……。洋服ばかりだともったいないからね……」

 小松は本当に心から愛しそうに、ゆきの首筋を愛してゆく。

 愛するひとに称賛されるというのは、なんて幸せなのだろうか。

 小松はゆっくりと肩口から、浴衣を脱がしてくる。

「君は本当に浴衣が似合っているから、誰にも見せたくはない……。私だけのものを、他の男に見せることなんて出来ないからね……」

 小松は、言葉で態度で独占欲を顕にして、ゆきを、愛撫した。

「……帯刀さん、ここだと、見えちゃうから……」

「大丈夫だから……。誰も見てはいないよ……。皆、花火に夢中だよ……」

「……だけど……」

 誰も見ていないと言っても、そんなことは分からないではないか。

 ゆきは恥ずかしくてしょうがなくて、小松にすがり付いた。

「……だ、だって、帯刀さん、恥ずかしいから」

「ふうん……。君は、“恥ずかしい”と感じてしまうぐらいに、まだ、私だけに集中していないということだね……」

 小松の声が、急に意地の悪い響きになる。

「……だ、だってっ、帯刀さん以外に、肌を晒したくないというか……」

 ゆきが泣きそうにしていると、小松は突然、激しく抱き締めてきた。

 余りにキツく抱き締められるものだから、ゆきは驚いてしまう。

「……ゆき、君はどうしてそんなにも可愛いことを言うの!?」

 小松はゆきをいきなり抱き上げると、部屋に入ってゆく。

 小松はリビングにゆきを寝かせると、カーテンを閉めて、素早く誰にも見えない状態にする。

「これで誰にも見えないでしょ?」

 小松は、ゆきを愛する環境を素早く整えると、浴衣を脱がしにかかってる。

 恥ずかしくて、ゆきは小松を潤んだ目で見つめる。

「……帯刀さん、花火は?」

「花火なんて、どうでも良いでしょ?それよりも、今の瞬間のほうが大切だと、私は思うけれど。……君に最高の花火を見せてあげるよ……」

 小松は、器用に、そして官能的に、ゆきの浴衣を脱がしてゆく。

「……あっ、ん……」

 肩の部分だけを下ろされて、白い胸が露になる。

 なんだかとてもいやらしい格好をさせられているのに、ゆきは抵抗をすることが出来なかった。

 小松は、むき出しにしたゆきの乳房を、下から持ち上げるようにゆっくりと、しっかりと、揉みしだいてゆく。

 お腹が痺れてしまうぐらいに痛くなる。

 それが小松を激しく求めているシグナルになることを、ゆきはよく分かっている。

 小松は、ゆきのマシュマロのように軟らかな乳房に、キスの雨を降らせてくる。

 わざと音を立ててキスをされて、ゆきは肌を小刻みに震わせてしまうぐらいに感じていた。

「……帯刀さんっ……!」

 ゆきは悲鳴にも似た甘い声を出すと、握り拳を作る。

 苦しいぐらいの甘さに、酔っ払ってしまいそうだ。

「……君は本当に綺麗だね……。死ぬまで毎日抱いても飽きないね……。自信あるよ、私は……」

 小松は透明感のある艶声で囁くと、ゆきの乳房の頂きを、味わうように舌先で舐める。

 こうして愛するひとにすべての感覚を支配されて抱かれる。

「……愛しているよ……」

 愛されているから、愛しているから、こうして総てを投げ出すことが出来る。

 ゆきは小松に自分の総てを委ねた。

 小松は緩やかに浴衣から帯を解いて、ゆきから覆うものを取り払う。

「……綺麗だね、君は……」

 小松に賞賛されるというのは、なんて気持ちが良いのだろうかと、ゆきは考えずにはいられない。

「……帯刀さんも綺麗ですよ……」

 ゆきは手を伸ばして、小松の髪留めを外す。

 髪留めを外すのが、今や大好きでしょうがないのだ。小松が自分の男なのだということを確認することが出来るから。

「……男に綺麗だなんて言って、君はどうするの……。全く、君には敵わないよ」

 小松は苦笑いしながら、浴衣を素早く艶やかに脱ぎ捨てようとする。

 だが、ゆきは自分で脱がしたくて、思わず手を伸ばした。

「……私がしたいです……」

 ゆきがおずおずと言うと、小松は静かに微笑んだ。

「良いよ。ただし、この件については、私は余り気が長いほうではないからね。それだけは、覚えておいて?」

「……はい」

 ゆきは震える指先を、小松の帯に持っていく。

 浴衣を脱がせたいなんて、大胆なことを言ったものだろうか。

 ゆきは指先が震えるのを何とか押さえようとしながら、かなりもたつきながら、帯をほどいてゆく。

 やはりすんなりとはいかないのは、大好きなひとの前では、全く余裕がないということなのだろう。

 しょうがないが、どうしてこんなにももたついてしまうんだろうか。

 小松は言葉とは裏腹に、辛抱強く待ってくれている。

 帯をようやくとき終わると、ゆきはホッと笑顔になった。

「……君ね、それぐらいで安心されたら困るんだけれど。まだ残っているよ」

 小松は呆れたように言うと、ゆきに視線で浴衣を指した。

「……そ、そうですね」

 浴衣と夏用の襦袢が残っている。

 ゆきはそれを一所懸命脱がしてゆく。

 こちらの時空に来ても、小松はさりげなく身体をシャープに鍛えている。

 浴衣を脱ぐと、小松の身体は引き締まっていて、うっとりするぐらいに美しかった。

 綺麗な身体を目の当たりにするものだから、ゆきは自分の身体が恥ずかしくなる。

 とりとめのない普通の身体に、ゆきは自信をなくした。

「……どうしたの?」

「……小松さんに比べたら、私はきれいじゃないなって……、きゃっ!」

 いきなり押し倒されたかと思うと、いきなり組み敷かれて、動けなくされる。

「……ゆき、ね、それを本気で言っているの?」

 小松は冷徹で鋭い眼光をゆきに向けてきた。

「……だって、小松さんはとても綺麗だし……」

「綺麗なのは君だよ。私なんかじゃない」

 小松はキッパリと言い切ると、ゆきの浴衣を一気に剥ぎ取った。

「こんなに私を恋い焦がれさせる身体がどこにあるというの……」

 小松は厳しくいいながらも、ゆきをとろけるように甘く抱き締めた。





マエ モドル ツギ