佐保姫

6


「持ち帰りの噂が立つだろうな」
 将臣は苦笑しながら、電車に乗り込んだ。
「そうだね。将臣くん、モテるからさ…。そういうの…嫌?」
 気持ちを探るように言うと、電車の中にも関わらず、将臣は躰を引き寄せてきた。
 人が見ていて恥ずかしいのに、どこかくすぐったいように嬉しかった。
「むしろ大歓迎…って言ったら?」
「嬉しいかな」
「それが嘘偽りのない気持ち。俺はお前以外にいらねぇもん。女はひとりでいいんだよ。お前だけで」
 将臣は、車内でひとの目があるにも関わらず、いけしゃあしゃあと言ってのける。堂々とした態度が、望美には素敵だと思った。
 ふたりで息がかかるぐらいに接近しながら、お互いを感じあう。
 どこでも一緒にいたいぐらいの”好き”が溜まっていく。
 手をしっかりと繋ぎ合ったまま、ふたりは最寄り駅で降りた。
 その頃には、望美の気分の悪さなんてどこかにいってしまっていた。
「夕飯、食べそこなったから、スーパーで何かを買って帰ろうよ」
「だな。お前、すげぇ飢えているみてぇだぜ」
「飢えているよ。安心したらお腹が空いちゃった」
 くすくす笑いながら、望美は、スーパーの惣菜売り場に走っていく。
「あっ、おさしみ安いね、サラダに、軟骨の焼鳥に、ローストビーフもある!」
「相当飢えていたんだな」
「飢えてるよ。将臣くんだってそうでしょう?」
 笑っていた将臣が、不意にあだめいた表情を浮かべ、望美はドキリとした。
「…飢えてるな。どうしようもねぇぐれぇに、お前に」
 低い声で小さく囁かれて、望美は耳まで真っ赤になった。
 恥ずかしさと嬉しさで、どうにかなってしまいそうだ。
「…意地悪…」
「マジなこと言ったまでだろ? うち着いたら、覚悟してろよ」
「お腹空いてたら出来ないもん」
「だったら少しぐらいは食わせてやるよ」
 甘えるように拗ねる望美を宥めるように、将臣は囁いてくる。
 将臣が切迫するぐらいに望美を欲しがってくれていることは、ずっとにぎりしめてくれていた手の強さで、伺い知ることが出来た。
 早々にレジを潜り、愛の巣であるアパートに帰っていく。
 スキップしたくなるぐらいに素晴らしい宵だと思った。

 アパートに入り、ふたりだけのパーティーの準備をする。全部出来合いのものだから、お皿に並べて終わってしまった。
 食事中に、将臣に引き寄せられて、肩をしっかりと抱かれる。
 こんなにふたりでいちゃいちゃしながら食事をしたのは、未だかつてなかった。
「コンパならこんなことは出来ねぇからな、早く帰ってきて良かったのかもな」
「コンパじゃなくてもしないじゃない」
「それだけ俺がお前を欲しいってことだ」
 将臣は、望美のワンピースの裾から手を入れて、ちょうど良い柔らかさのふとももに触れてくる。
 痺れるような気持ち良さに、望美は熱い吐息を吐いた。
パンストの中に手が入りこみ、思わず声が漏れた。
「…もう限界。お前の全部が欲しくてたまらねぇんだよ」
 将臣は熱に浮かれたような声で呟くと、望美を床に押し倒した。
 まだ食事は終わっていないので、少し焦る。
「お、お腹が空いちゃうよっ」
「また食わせてやるから。それよりも俺の飢えをどうにかしてくれ…」
 将臣の大きな手が背中に回されて、望美のワンピースのファスナーが下ろされる。
「やっ…!」
「お前に…飢えているんだよ…。たっぷり食わせて貰うからな」
「んっ…!」
 将臣は望美の唇を強く吸い上げ、舌先で巧みに愛撫をしてくる。
 深いキスと浅いキスを繰り返し与えられ、呼吸が早くなってきた。
 食べかけの夕食のことなんて、すっかり忘れてしまうぐらいだった。
 ワンピースを腰にひっかかるような形で脱がされ、目立つところに唇を受ける。
「あっ…! 痕ついちゃう」
「付けたって構わないだろ。お前は俺のもんなんだから」
 強引な主張をしながら、将臣は、痣になるのではないかと思うぐらいに、肌を吸い上げてきた。
「…望美…」
 何時もよりも余裕のない声で名前を呼ばれる。切迫した情熱に、望美の気持ちもたぎった。
 将臣は望美の下着に手を入れると、襞を掻き分けて肉芽を弄る。いつもより乱暴で、意地悪な動きでないダイレクトな動きに、望美は直ぐに燃え上がっていく。
「…あっ…! ああんっ!」
 敏感になる余りに、腰が浮き上がってしまう。気持ちが良すぎて、涙が出そうだ。
 実際に泣いていたかもしれない。
 久々に、愛する男から受ける愛撫に、感覚が研ぎ澄まされる。
 感じやすくなり、溶けてしまいそうだ。
 無意識に唇から唾液を零した。
 将臣は、望美の脚を大きく開けると、そこに顔を埋める。
 肉芽のラインをなぞるように舐められて、頭がどうにかなりそうだ。
「ま、将臣くんっ…!」
 肉芽が限界に震えるぐらいに舐められて、腰から下の力が抜けてしまった。
 蜜をとろとろに垂らしながら追い詰められる。
 熱くて圧迫のある堅い将臣が、欲しくてしょうがなくなった。
 腰が自然に揺らめいてしまう。
「…ま、将臣くんっ…!」
 ねだるようにその名前を呼ぶと、将臣は荒々しく欲望を押し付けてきた。
「…俺も…たまらねぇ…もう…。生でお前を感じたい…」
 将臣は息を殺して囁くと、望美の胎内に一気に押し入ってきた。
 いつも以上の欲望の強さに、望美はたまらなくなる。
 その上、ゴムを通さずに、直接将臣の熱を感じているのが嬉しくて、気持ちが良い。
 声にならない声が出てしまう。
 待ち焦がれた圧迫に、涙が零れ落ちる。
 気持ちが良くて、このままどうにかなりそうだった。
 完全に将臣は入り込んだが、優しい動きではなく、いきなり激しく突き上げてくる。
 痛いぐらいの突き上げなのに、気持ちが良くてしょうがなかった。
 ダイレクトに突き刺さる将臣の熱は、いつもよりも深い場所に浸透してくるような気がした。
 細胞レベルで将臣を感じる。
 何もなく挿入するのは、男にとっては最高に気持ち良いものだと聞いたことはあるが、望美もその気持ちが解ったような気がした。
 もっと深いところで将臣を感じたい。
 将臣を直接強く締め付けていく。
「…クッ…! お前のナマは、やっぱり最高だぜ…っ!」
「ああっ!」
 最奥を将臣が突き上げてくる。頭の芯がぼんやりとしてしまうぐらいに感じた。
「あっ、ああっ、ああんっ!」
 まるでメス猫みたいに吠えなければ、墜落してしまうのではないかと不安を覚えた。
 将臣の背中に強く縋り付くと、より奥深いところに突き刺さる。
 視界が揺れ、将臣に縋り付くしかない。
「んっ…! ああっ!」
 衝撃とともに、理性が砕け落ちた。
 そのまま望美は快楽に身を任せていく。
 躰が弛緩してしまう。
 その後に、将臣の逞しい躰が震えた。
「あっ…! ああっ!!」
 女の部分に、将臣の精が勢い良く注がれる。
 直接感じる熱に、望美は幸せを感じながら目を閉じた。
コメント

キリ番で書いた「筒姫」の前段階のお話です。



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