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アリオスに名前を呼ばれたような気がして、アンジェリークははっとした。 叔父ちゃん・・・。 探してくれているはずなんてないのに・・・。 オスカーの実家に世話になって、そろそろ一月になる。 これ以上は迷惑をかけられないので、そろそろ本当にこの場所も後にしなければならない。 時々、オスカーも心配してか、様子を見にきてくれる。 それにはとても感謝していた。 オスカーの母もすっかりアンジェリークを気に入ってくれている。 「お嬢ちゃん、お茶が入ったそうだ」 「はい、有り難うございます」 僅かに微笑みを浮かべると、アンジェリークは頷く。 以前のような笑顔がお嬢ちゃんから見られなくなったな・・・。 それは当たり前か。 アリオスがいないんだからな・・・。 「あ、お手伝いします」 オスカーの母親が準備をしているのを見て、アンジェリークはほんの僅かだが手伝う。 「いつも有り難う」 オスカーの母の言葉に、アンジェリークは笑顔で返した。 こんなに豪華じゃなかったけど、叔父ちゃんと飲んだお茶は美味しかった・・・。 「ねぇ、アンジェちゃん、オスカーとも話していたんだけれど、うちの養女にならない?」 「養女・・・」 突然の申し出に、アンジェリークは正直驚いた。 考えても見なかったことを言われて、正直驚いた。 「私・・・」 俯いて前を見ることができない。 オスカー母子には感謝している。 感謝してもしきれないと思っている。 だが、”養女”という言葉に戸惑いを覚えるのも、また事実だ。 自分勝手だとは思う。 だが、血は繋がらなくても、アリオス以外の人間と家族になりたくないし、なれなかった。 「よく考えてくれたらいいんだ。お嬢ちゃん」 「・・・はい。有り難うございます」 そう言ったものの答えなんて決まっていた。 逡巡することなんてない。 直後に口づけたお茶は、妙に苦かった。 最近演技にも全く実が入らない。 アンジェリークのせいだ。 オスカーからはあれから連絡は一切なく、こちらから連絡をしようにも、出来ない状態だった。 オスカーのやつめ、いったいどこにいやがる・・・!!! アリオスは今日の役柄であるチンビラの格好をして、スタジオの廊下をぶらぶら歩いていた。 目の前を歩いている男を見てはっとする。 オスカーだ。 最近、正月スペシャル時代劇の”あさきゆめみし”で光源氏を演じているせいか、直衣スタイルだ。 「オスカー、オスカー!!」 何度か名前を呼ぶが、オスカーの返事はない。 アリオスは少し苛ついて、更に追いかける。 「オスカー!!!」 直前で肩を掴んで呼び止め、ようやく立ち止まった。 「何だ・・・、アリオスか・・・」 「”何だ、アリオスか”じゃねぇ!!!」 アリオスの激しい苛立ちに、なるべく反応しないようにオスカーは努めた。 だが、冷たい激情の炎が瞳の奥に燃え盛っているのが判る。 オスカーが無反応でいると、アリオスはいきなり掴み掛かってきた。 「アンジェをどこに隠しやがった、この野郎!!!」 アリオスは冷静ではなく、完全に恋するひとりの男だった。 「お嬢ちゃんは、うちの養女にすることになったんだ」 「・・・!!!」 アリオスの表情が瞬時に変貌する。 「勝手なことをするな!! あいつの保護者はこの俺だ!!!」 かなりいきり立ったアリオスは、手に追えないほどだった。 「血が繋がってない以上、あの子はそうは思っちゃいないよ」 「・・・アンジェがそう言ったのか?」 アリオスの表情が煙る。 「ああ。そうだ・・・」 本当は同意してもらったわけではない。だがオスカーは思わず言ってしまった。 「くそっ!!! アンジェを返しやがれっ!!!」 いきなりアリオスが殴りかかり、勢いでふたりして倒れる。 アリオスが殴りかかる時、その瞳を見て、オスカーははっとする。 こいつ本気であの子のこと・・・。 「返せ! アンジェを返せよ!!!」 アリオスの燃えるような瞳と、切ない表情にオスカーははっとする。 おまえたちはこんなに好きあっている・・・。 俺はそれを邪魔しているってことか・・・。 オスカーは胸の奥がひどく痛くなるのを感じる。何だか笑ってしまう。 「何がおかしい!?」 「いいや。すぐに撮りだ。決着は後でつけよう」 「後で決着なんて温いことなんか言うんじゃねえ! 今だ! 今決着を付けろ!!!」 アリオスがかかってくるのを、オスカーは一瞬早くかわして立ち上がる。 「決着は必ずつけさせてやる。心配すんな。おまえたちには絶対に必要だ」 オスカーは低い声で呟くと、ゆっくりと立ち去る。 そう、おまえたちはちゃんと決着を着けなければならないんだ・・・。 凛として背筋を延ばすオスカーを見送りながら、アリオスは苦しい思いを感じていた。 |
コメント 昔懐かしい少女マンガを踏襲した物語です。 悪役スターアリオスとその姪アンジェリークのお話です。 後少しです。 次回最終回と言いましたが、もう一回おねがいします |