Tea For Two

7


 ピクニック・・・。
 約束したままお父さんたちは帰って来なかった…。

 夜、布団に入っても切なさは消えない。
 アンジェリークは眠れなくて、何度も何度も寝返りを打った。
 ピクニックの想い出だけではなく、様々な家族の想い出が湧き出てきて、苦しくなる。

 お父さん、お母さん〜!!!

 何度泣いても、哀しい気分は全く払拭されやしない。
 寂しさが怒濤のように襲ってきて、苦しくてしょうがなくて、とうとうベッドから出てきてしまった。
 行く場所は一か所しかない。アリオスの部屋だ。
 ドアを開ける音がしてアリオスがはっとすると、アンジェリークが部屋に入ってきた。
「おい、アンジェ!」
 窘めるように名前を読んでも、アンジェリークはベッドに直進してそのままアリオスのベッドに入ってしまう。
「おいっ、アンジェっ!」
 ベッドに入り込むなり、アンジェリークはアリオスにしがみついてくる。
 そして間髪入れぬ間に泣き出してしまった。
「アンジェ・・・」
 しがみついてきて離れようとしない少女を、アリオスはそっと優しくあやす。

 無理もねえ・・・。
 こいつは最近両親を亡くしたばかりなんだから・・・。

 抱き締めながら背中を撫で、優しく何度も囁いてやる。
「俺がいるだろ? おまえはひとりじゃねえんだから」
「うん、うん」
 優しくも甘い温もりに、アリオスは胸が苦しくなった。

 変な気分だ・・・。
 こいつは俺の姪のはずなのに・・・。

 抱き締める腕を強くすると、それに応えるかのようにアンジェリークが更にしがみついてくる。

 叔父ちゃん・・・。
 叔父ちゃんの温もりはホントに凄く優しい・・・。
 何よりも安心できるよ。
 大好き・・・。

 心地の良いアリオスの香りと温もりに、アンジェリークはゆっくりと目を閉じる。
 いつしかアリオスの腕の中で眠りに落ちていた。
 ほっとしてベッドにアンジェリークを寝かすと、LDKに向かう。

 熱を冷まさねえといけない。

 冷蔵庫に入っている、冷たく冷やされたスポーツドリンクを飲んでも、喉の乾きは癒えてもほてる熱を冷ますことは出来ない。

 ・・・あいつは姪だ。
 そう何度も自分に言い聞かせてきた。
 だが、俺の本心は・・・。

 アリオスは煙草を一服吸いながら、どうしようもないほど盛り上がった熱を冷まそうとしていた。


 朝、目が覚めると、アリオスのベッドに寝かされていて、びっくりしてしまった。
 アリオスは部屋にはおらず、ベッドを占領してしまった格好になる。
「叔父ちゃん?」
 ベッドから降りてLDKに向かうと、ソファの上で眠りこけているアリオスがいた。

 叔父ちゃん・・・。
 有り難う。

 アリオスの寝顔を見つめながら、しみじみと心で呟く。
 アリオスの寝顔をじっと見つめた後、アンジェリークは朝の支度を始めた。


 クラスメートとお昼休みに、色々と世間話をしながら、ごはんを食べるのが楽しみだ。
「昨日、叔父ちゃんとダンスをしに行ったら、オスカーに逢ったの」
 これには誰もが驚いて、羨ましそうな視線を送っている。
「オスカーを見たの!! 凄い! ねえ、カッコ良かった!!」
 オスカーの大ファンのアンジェリークが興奮気味に言っている。
「うん、素敵だった。後、アリオスもいたわよ」
 ”アリオス”のところをわざと強めに言い、誇らしげにする。
 アリオスがオスカーよりも素敵であることを強調したかった。
「え〜! アリオス! あのすけべえな俳優! だって悪役だとか、レイプ犯ばっかりやっているもんね〜」

 す、凄い言われようだわ・・・。
 叔父ちゃんはそういう役ばっかりやっているから、仕方がないんだろうけれど・・・。
 でも叔父ちゃんの方がずっと素敵なんだから!

 アンジェリークは心の中で少し憤慨していた。

 みんな判ってないな・・・。
 やっぱり俳優は、演じる役に左右されるんだ・・・。

 アンジェリークは少し寂しい気分になってしまった。


 学校の帰り、今夜のごはんのことなどを考えていると、目の前を歩いていた中年の女性が躓いてスーパーの袋から荷物を沢山落としている。
「大丈夫ですか?」
 アンジェリークはすぐに駆け寄って、女性の荷物を拾ってやる。
「有り難う」
 女性はかなりの荷物を持っており、きっとまた落としてしまうだろう。
「おうちまでお持ちしますよ?」
「ホント、有り難う、助かります。今日は息子が帰ってきているからつい買い込んじゃって」ア
 ンジェリークは微笑むと、婦人の荷物の半分を持ってやる。
 婦人の家はすぐ近くで、話しているうちにすぐ着いた。
「では、私はこれで」
「有り難う、助かりました。お礼代わりに、うちでお茶などいかがですか? 手作りのケーキもありますから」
 婦人が余りにも熱心に言うものだから、アンジェリークはお茶だけごちそうになることにした。
 婦人の家はそのイメージ通りにとても品があり、通されたLDKも外国の映画に出てくるような雰囲気だ。
「今朝、息子が帰ってくるから一生懸命スコーンをやいたんですよ。温め直すと、とても美味しいのよ」
 リーフから入れた紅茶で作ったミルクティと、温かなスコーンには生クリームとブルーベリージャムが付いている。
 とても本格的で、アンジェリークは嬉しい驚きを感じた。
「美味しそうです〜!」
「めしあがれ」
 まずはスコーンを食べると、本当に優しい味がして美味しい。
「凄い美味しい〜!」
「こんなに喜んでもらったら、作りがいもあるものだわ」
 本当に美味しくて、アンジェリークはぱくぱくとスコーンを食べる。
「あなたはお名前は何とおっしゃるの?」
「アンジェリークです」
「おいくつ?」
「17です」
 婦人はにこやかに微笑むと、アンジェリークをじっと見つめる。
「あなた本当に愛らしくていい子だわ。息子の嫁にならない?」
「え?」
 いきなり言われても、アンジェリークは驚くばかりだ。
「あ、あの・・・」
「おふくろ、何騒いでるんだ」
 聞き覚えのある声にアンジェリークは顔をドアに向けると、そこにはオスカーがいた。
「お嬢ちゃんじゃないか」
「オスカーさん」
「何だ知り合いだったの」
 まさしく世間は狭いもので、助けた婦人の息子がまさか大スターオスカーだとは思わなかった。
「俺の友達の姪っ子だ」
「まあ、そうだったの。今日このお嬢さんに助けていただいたのよ」
 オスカーの母親は笑顔混じりにしみじみと息子に語って聞かせた。
「サンキュ、お嬢ちゃん」
「たまたまですから。私こそ、お茶をごちそうになってしまって・・・」
「ゆっくりしていけよ」
 オスカーは微笑みを浮かべると、アンジェリークの目の前に腰を掛け、じっと見つめてくる。
「やはりお嬢ちゃんとお茶を飲むことになったな。そんな気がしてた」
 さらりときざなことを言われ、アンジェリークは真っ赤になる。

 流石二枚目俳優だな。
 きざな台詞もぽんぽん出るんだ…。
 だけど…。
 私は同じ台詞を叔父ちゃんに言って貰った方が、嬉しい…。

 目の前に大スター俳優がいるのにもかかわらず、アンジェリークが考えることはアリオスのことだけだった------
 

コメント

昔懐かしい少女マンガを踏襲した物語です。
悪役スターアリオスとその姪アンジェリークのお話です。
アンジェちゃんとアリオス叔父ちゃん。
どんどん近付いていきます。
次回あたりから恋愛テイストです〜




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