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ピクニック・・・。 約束したままお父さんたちは帰って来なかった…。 夜、布団に入っても切なさは消えない。 アンジェリークは眠れなくて、何度も何度も寝返りを打った。 ピクニックの想い出だけではなく、様々な家族の想い出が湧き出てきて、苦しくなる。 お父さん、お母さん〜!!! 何度泣いても、哀しい気分は全く払拭されやしない。 寂しさが怒濤のように襲ってきて、苦しくてしょうがなくて、とうとうベッドから出てきてしまった。 行く場所は一か所しかない。アリオスの部屋だ。 ドアを開ける音がしてアリオスがはっとすると、アンジェリークが部屋に入ってきた。 「おい、アンジェ!」 窘めるように名前を読んでも、アンジェリークはベッドに直進してそのままアリオスのベッドに入ってしまう。 「おいっ、アンジェっ!」 ベッドに入り込むなり、アンジェリークはアリオスにしがみついてくる。 そして間髪入れぬ間に泣き出してしまった。 「アンジェ・・・」 しがみついてきて離れようとしない少女を、アリオスはそっと優しくあやす。 無理もねえ・・・。 こいつは最近両親を亡くしたばかりなんだから・・・。 抱き締めながら背中を撫で、優しく何度も囁いてやる。 「俺がいるだろ? おまえはひとりじゃねえんだから」 「うん、うん」 優しくも甘い温もりに、アリオスは胸が苦しくなった。 変な気分だ・・・。 こいつは俺の姪のはずなのに・・・。 抱き締める腕を強くすると、それに応えるかのようにアンジェリークが更にしがみついてくる。 叔父ちゃん・・・。 叔父ちゃんの温もりはホントに凄く優しい・・・。 何よりも安心できるよ。 大好き・・・。 心地の良いアリオスの香りと温もりに、アンジェリークはゆっくりと目を閉じる。 いつしかアリオスの腕の中で眠りに落ちていた。 ほっとしてベッドにアンジェリークを寝かすと、LDKに向かう。 熱を冷まさねえといけない。 冷蔵庫に入っている、冷たく冷やされたスポーツドリンクを飲んでも、喉の乾きは癒えてもほてる熱を冷ますことは出来ない。 ・・・あいつは姪だ。 そう何度も自分に言い聞かせてきた。 だが、俺の本心は・・・。 アリオスは煙草を一服吸いながら、どうしようもないほど盛り上がった熱を冷まそうとしていた。 朝、目が覚めると、アリオスのベッドに寝かされていて、びっくりしてしまった。 アリオスは部屋にはおらず、ベッドを占領してしまった格好になる。 「叔父ちゃん?」 ベッドから降りてLDKに向かうと、ソファの上で眠りこけているアリオスがいた。 叔父ちゃん・・・。 有り難う。 アリオスの寝顔を見つめながら、しみじみと心で呟く。 アリオスの寝顔をじっと見つめた後、アンジェリークは朝の支度を始めた。 クラスメートとお昼休みに、色々と世間話をしながら、ごはんを食べるのが楽しみだ。 「昨日、叔父ちゃんとダンスをしに行ったら、オスカーに逢ったの」 これには誰もが驚いて、羨ましそうな視線を送っている。 「オスカーを見たの!! 凄い! ねえ、カッコ良かった!!」 オスカーの大ファンのアンジェリークが興奮気味に言っている。 「うん、素敵だった。後、アリオスもいたわよ」 ”アリオス”のところをわざと強めに言い、誇らしげにする。 アリオスがオスカーよりも素敵であることを強調したかった。 「え〜! アリオス! あのすけべえな俳優! だって悪役だとか、レイプ犯ばっかりやっているもんね〜」 す、凄い言われようだわ・・・。 叔父ちゃんはそういう役ばっかりやっているから、仕方がないんだろうけれど・・・。 でも叔父ちゃんの方がずっと素敵なんだから! アンジェリークは心の中で少し憤慨していた。 みんな判ってないな・・・。 やっぱり俳優は、演じる役に左右されるんだ・・・。 アンジェリークは少し寂しい気分になってしまった。 学校の帰り、今夜のごはんのことなどを考えていると、目の前を歩いていた中年の女性が躓いてスーパーの袋から荷物を沢山落としている。 「大丈夫ですか?」 アンジェリークはすぐに駆け寄って、女性の荷物を拾ってやる。 「有り難う」 女性はかなりの荷物を持っており、きっとまた落としてしまうだろう。 「おうちまでお持ちしますよ?」 「ホント、有り難う、助かります。今日は息子が帰ってきているからつい買い込んじゃって」ア ンジェリークは微笑むと、婦人の荷物の半分を持ってやる。 婦人の家はすぐ近くで、話しているうちにすぐ着いた。 「では、私はこれで」 「有り難う、助かりました。お礼代わりに、うちでお茶などいかがですか? 手作りのケーキもありますから」 婦人が余りにも熱心に言うものだから、アンジェリークはお茶だけごちそうになることにした。 婦人の家はそのイメージ通りにとても品があり、通されたLDKも外国の映画に出てくるような雰囲気だ。 「今朝、息子が帰ってくるから一生懸命スコーンをやいたんですよ。温め直すと、とても美味しいのよ」 リーフから入れた紅茶で作ったミルクティと、温かなスコーンには生クリームとブルーベリージャムが付いている。 とても本格的で、アンジェリークは嬉しい驚きを感じた。 「美味しそうです〜!」 「めしあがれ」 まずはスコーンを食べると、本当に優しい味がして美味しい。 「凄い美味しい〜!」 「こんなに喜んでもらったら、作りがいもあるものだわ」 本当に美味しくて、アンジェリークはぱくぱくとスコーンを食べる。 「あなたはお名前は何とおっしゃるの?」 「アンジェリークです」 「おいくつ?」 「17です」 婦人はにこやかに微笑むと、アンジェリークをじっと見つめる。 「あなた本当に愛らしくていい子だわ。息子の嫁にならない?」 「え?」 いきなり言われても、アンジェリークは驚くばかりだ。 「あ、あの・・・」 「おふくろ、何騒いでるんだ」 聞き覚えのある声にアンジェリークは顔をドアに向けると、そこにはオスカーがいた。 「お嬢ちゃんじゃないか」 「オスカーさん」 「何だ知り合いだったの」 まさしく世間は狭いもので、助けた婦人の息子がまさか大スターオスカーだとは思わなかった。 「俺の友達の姪っ子だ」 「まあ、そうだったの。今日このお嬢さんに助けていただいたのよ」 オスカーの母親は笑顔混じりにしみじみと息子に語って聞かせた。 「サンキュ、お嬢ちゃん」 「たまたまですから。私こそ、お茶をごちそうになってしまって・・・」 「ゆっくりしていけよ」 オスカーは微笑みを浮かべると、アンジェリークの目の前に腰を掛け、じっと見つめてくる。 「やはりお嬢ちゃんとお茶を飲むことになったな。そんな気がしてた」 さらりときざなことを言われ、アンジェリークは真っ赤になる。 流石二枚目俳優だな。 きざな台詞もぽんぽん出るんだ…。 だけど…。 私は同じ台詞を叔父ちゃんに言って貰った方が、嬉しい…。 目の前に大スター俳優がいるのにもかかわらず、アンジェリークが考えることはアリオスのことだけだった------ |
コメント 昔懐かしい少女マンガを踏襲した物語です。 悪役スターアリオスとその姪アンジェリークのお話です。 アンジェちゃんとアリオス叔父ちゃん。 どんどん近付いていきます。 次回あたりから恋愛テイストです〜 |