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憧れていた者からの申し出にアンジェリークはときめきを感じずにはいられなかった。 胸の鼓動が激しく、甘い感覚が全身を駆け抜ける。 「すぐに支度をしろ」 「はい・・・」 甘い感慨を破るかのように、感情のないアリオスの声が有無言わせずに響き渡る。 現実に引き戻されたような気概を産む。 言われたようにアンジェリークは荷物をまとめ始めたが、元々余りない為にすぐに済んでしまった。 その間、アリオスは煙草を吸いながらじっと待っていてくれる。その横顔は素敵だと思う半面、どこか無機的にも感じられた。 やっぱりアリオスさんは素敵だな・・・。 凄くかっこいい。 けれども、決して私が背伸びをしても届く相手ではないけれど・・・。 「出来ました」 「ああ、出来たか」 アリオスは煙草を携帯用灰皿に押し付けると、さりげなくアンジェリークの荷物を持ってくれた。 「有難うございます」 このような心遣いが、今のアンジェリークには嬉しくて堪らない。 「総てが決着を着けば、また帰ってこれる」 「はい」 一瞬、アリオスの瞳が何かを考えるかのように揺らめいたが、直ぐにいつもの感情のないそれに変わった。 質素なわが家を後にして、アリオスの車に乗り込む。まるで違う世界に行くような気分になり、期待、安堵、惨めさが交差している。 車に乗り込むと、少しほっとした。心地のよいシートに遠慮がちに身体を静める。気持ちが少しだけ落ち着いてくる。 アリオスのマンションに着くまでの間、ジャズが流れる。今はこういった小気味の良い音楽の方が良い。 不意にとても耳障りの良い音が響き、アンジェリークは心が洗われるような気分になる。 「この曲は?」 思わずアリオスに訊いてしまう 「”いつか王子さまが”ディズニーの旧い曲だ」 「”いつか王子様”が…」 そのロマンティックなタイトルに、アンジェリークは夢心地な気分になる。 曲のおかげか、これから勝手知らぬ場所で暫く暮らす緊張も、かなりほぐれ始める。 音楽を堪能していると、アリオスのマンションに着いてしまった。 「行くぞ」 「はいっ」 荷物はごくごく自然にアリオスが持ってくれた。 そのようなさりげない優しさが、アンジェリークの心にゆっくりと染みこむ。 エレベーターに乗るなり、緊張が身体を駆け抜ける。狭い場所のせいか、妙にアリオスをひとりの”男性”として意識してしまう。 車よりも離れているのに、どうしてこんなにドキドキするんだろう…。 顔を 真っ赤にしたところで、エレベーターは停まってくれた。 「着いたぜ」 「はいっ!」 慌ててエレベーターから降り、アリオスの後を着いていく。 端の部屋のドアのキーを開き、アリオスが中に招き入れてくれた。 「ここは、防犯設備もしっかりとしたマンションだ。安心していられる。キッチンやサニタリー関係は俺と共用だが、自由に使ってくれていい」 無機質にアリオスは淡々としている。どこかビジネスライクな態度だ。 「後、この部屋を使ってくれたらいい」 そう言って紹介してくれたのは、程よい大きさの客間だった。 ベッドと最低限の家具しかないが、シンプルにまとめてあり、とても落ち着いている。 「有り難うございます! これでゆっくりと眠られます」 深々と頭を下げ、アンジェリークは思わず本音を言ってしまった。 アリオスは苦笑する。 「節度を守れば、おまえの好きなように使ってくれたらいい」 「有難うございます」 丁寧にアリオスに礼を言うと、荷物をベッドの上に置いてくれる。アリオスは相変わらずクールで、淡々と仕事をこなしているように見えた。 「サニタリーはキッチンの隣にあるから使ってくれ。今日は疲れただろうから、ゆっくり風呂にでも入って休め。何かあったら呼んでくれ」 「はい、色々とすみませんでした」 アンジェリークは部屋から出ていくアリオスの背中を見つめながら、胸が苦しい。 とりあえずの安心出来る場所を得ることが出来てほっとする。しかも、憎からず想っている相手のせいか、当然のことながら甘くも切ない気分になっていた。 けれど、アリオスさんは私なんかを相手になんかしないわよね・・・。 アリオスさんが自分に恋をするなんて考えられないもの・・・。 解ってはいながら、胸の奥がズンと痛んだ。 だが、落ち込んではいられなくて、持ってきた荷物を整理することにする。。 質素な生活をしていたアンジェリークは余りに荷物を持って来てはいなかった。 そのせいかすぐに片付けも済み、お風呂疲れを取ることにする。 今日は色々あって疲れたせいか、お風呂は有り難い。 これからどうなるんだろう…。わたし。 そんなことを考えてはいたが、不思議と深刻な暗さにはならなかった。 傍に支えてくれる人がいることが判っていたから。 ゆっくりと風呂を堪能した後出ると、アリオスとばったりキッチン出会った。 風呂上がりに逢うのはどうも恥ずかしい。 まるで子供のようだから。 アリオスの視線に一瞬捕らえられて恥ずかしい。 甘い緊張は瞬く間に全身をかけめぐった。 「おい、ガキは早く寝ろよ」 「-----あ…」 こちらがこんなにも緊張をしているというのに、あまりにもあっさりとした反応で、少々肩透かしを食った。 部屋に戻り息を吐く。 不思議といつもよりもひとりじゃないようなきがした。 これから、どうなるか判らないけれど、きっとアリオスさんの元だったら、頑張っていけるから…。 アンジェリークは淡い恋心を抱きながら、アリオスに迷惑がかからないようこれからの生活を頑張って行こうと誓うのだった。 |
| コメント 星の王女の古賀さんと未来ちゃんのお話をモチーフにしたアリコレです。 短い間よろしくです〜 しかしファイル名が「Daddy」 ヒ○ミGOを思い出す(笑) |