Thank You Mr.Right

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 アンジェリークにとっては、現場を生で体験できるというのは非常に貴重で、かつ、勉強になるものだった。
 アリオスの邪魔にならないように、隅から様子を見守る。
 アリオスは頭に無線機のヘッドセットを付けると、まずは影像を手早くチェックし、情報にいち早く目を通し、流暢な字で原稿をさらさらと書き始めた。
 その横顔は真剣そのもので、アンジェリークは見惚れずにはいられない。
 ひき締まった精悍な横顔は凛々しさが薫っている。
「これをすぐにアンカーに渡し、こっちを現場にいるリポーターに流せ。至急だ」
「はいっ!」
 ばたばたとスタッフはニュースセンターから出ていき、すぐさまアリオスは影像に神経を切り換えた。
「現場リポーターはサブアンカーに任せろ」
 アリオスは無線でてきぱきと指示を飛ばし、刻々と迫る緊急生中継に備えた。
 テレビ局ニュースセンターの厳しさが、アンジェリークは肌で感じる。
 誰もがてきぱきと動き回り、自分と同じ空間にいるのにも関わらず、切り離されているような気がした。
「コレット」
「はいっ!」
 切り裂くような声で名前を呼ばれて、アンジェリークは直立不動になる。
「何でしょうか!?」
 すぐにアリオスに駆け寄っていくと、冷たい横顔が迫っている。
「センターの左奥のパントリーでコーヒーを淹れてきてくれ。その辺のプラカップのささったホルダーでいい」
「はいっ!」
 取りあえず、何か用事を言って貰えて嬉しかった。
 アンジェリークはばたばたとパントリーに向かい、準備をすることにする。
 すぐにコーヒーを淹れるカップは見つかり、コーヒーを探すと、コーヒーメーカーのデカンタにはもうほとんど残っていなかった。
 アンジェリークは辺りをきょろきょろと見回してから、新人用に壁に張られたマニュアルを参照し、コーヒーを点て始める。

 どうか美味しくなりますように・・・。

 魔法のような一言を唱えながら、アンジェリークはコーヒーを淹れた。
 少し時間がかかったので、怒られるかもしれないとびくびくとしながら、アリオスにコーヒーを差し出す。
「コーヒーです」
「ああ、サンキュ」
 意外にあっさりとした返事だったので、少しほっとしながら、アンジェリークは一歩下がった。
 また、先程の位置に戻り、センターの様子を見学する。
 すぐに報道特別番組が始まり、緊張感がアンジェリークにも肌で感じられた。
 アリオスはと言えば、アンカーに無線で指示を飛ばしている。
 その背中が、アンジェリークにはとても逞しいものに映った。
「おい、三カメ!! 銀行の窓を抜け!」
 鋭いナイフのような声が響き、アンジェリークはびくりとした。
「そうだ、アップで抜け! 犯人が見える」
 アリオスの洞察力の鋭さに、アンジェリークは感心せずにはいられなかった。
 灰皿にアリオスの煙草の吸いがらが山となる。
 それをアンジェリークは素早く変えたりして、なるべく手伝えるように努力した。
「おい、ファックスが俺宛てに来ているものがあれば、持ってきてくれ。ファックスは入り口の左手だ」
「はいっ! 判りました」ア
 リオスに用事を言われたのが嬉しくて、アンジェリークはいそいそと向かう。
 目で探してすぐにファックスが見つかり、山のようにあるものから、アリオス宛てのものをピックアップした。
 それを持っていくと、すぐにそれを受け取ってくれる。
「サンキュ」
 アリオスはそれを見るなり、チェックを入れていった。
 アリオスがニュースを仕切っている間、コーヒーもなくなっていたので、お代わりを淹れる。
 コーヒーを啜りながらアリオスが画面を見ていると、にわかに動きが見えた。
「SWATが動いた! 1カメ!」
 すぐに切替えが行われ、迫力のある影像が画面に飛び込んでくる。
「すぐコメント。実況入れろ」
 アリオスはすぐに指示を入れ、キャスターが動いていく。
 アンジェリークは緊迫した現場を、端であっても見ることができて、感激していた。
 アリオスは、その劇的なシーンを冷静に見ながら、ニュース原稿を構成している。
 犯人がSWATに連行されてくる影像がどんと放映モニターに映る
 。人質が開放され、アンジェリークも固唾を飲んで見守っていた。
「ファックス調べてくれ」
「はいっ!!」
 アンジェリークはばたばたとファックスを取りに行き、アリオス宛ての最新ファックスを持ってくる。
 それを見るなり、アリオスはすぐにペンを走らせた。
「おい、俺が指示を入れるから、その通りにレポートしろ」
 無線でアリオスが話すなり、レポーターは頷く。
「本日、アルカディア銀行本店で起こった銀行強盗事件は、SWATの突入により、犯人逮捕となりました」
 アリオスが今目の前で話したことを、ワンテンポ遅れてリポーターが話し始める。
 アリオスの正確に真実を伝える姿勢に、アンジェリークは敬復せずにはいられなかった。
 無駄は一切ない。
 ただ正確に判り易く、事実を伝えきっていた。
「オッケ、スタジオのアンカー、無血解決ではないことをしっかりと伝え、しめに入れ」
 今まで何気なく見ていたニュースの裏側を見ることができ、アンジェリークは嬉しいと同時に興奮していた。
「オッケ。スタジオフロアディレクター、後は頼んだぜ」
 アリオスがスタジオの部下に連絡をして無線機のヘッドセットを外した。
 アリオスが視線をゆっくりとやってきてドキリとする。
「おまえも少し休憩しろ。疲れただろ」
「あ、あの・・、大丈夫です」
 アリオスが素敵すぎて、ついしどろもどろで答えることしか出来ない。
 アリオスは、一端はデスクから立ち上がると、煙草を口に銜えて、パントリーへと向かった。
 しばらくして出てきてくれたアリオスの手には、ジュースがしっかり握られていた。
「ほら、疲れを癒すために飲めよ」
「はい」
 コップを受け取ると、アンジェリークは素直にうけった。
「有り難うごさいます」
 早速飲んで、甘いジュースを堪能する。
「あまりお役に立てなくてすみません…」
「いや充分助かった。
 ------なあ、ここでアルバイトするって気にはならねえか?」
「え!?」
 嬉しくて堪らない申し出。
 アンジェリークは頬を染めながら、ただじっとアリオスを見つめていた。
コメント

新しい、アリコレのカップルものを立ち上げたくて書きました。
ジャーナリストと女子高生。
今回は出逢い〜恋に落ちて編です。
頑張ります〜。




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