bodyguard

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 たまたま止まっていた出入り業者のトラックの荷台に隠れ、それが動くと同時に冒険が始まった。
 まるで、初めて電車に乗る子供のような気分のわくわく感がある。
 思い付きだとは言え、未知なる冒険にアンジェリークは胸を高まらせていた。

 どこにいこうか?
 おりたところから、おもしろそうなところを行こう

 そんなことをここぞとばかりに考えてみる。
 トラックの荷台から見える景色は新鮮で、微笑まずには鋳いられない。
 アリオスが帰ってくるまでの間に、束の間の冒険を楽しむことにした。

 トラックが、街の中心部で止まったので、アンジェリークはそこから飛び下りて、街に出る。
 自由に街の喧騒を感じるのが嬉しくて、にんまりとしてしまう。
 ぶらぶらと街の様子を見ながら、アンジェリークは愉快に散策し始めた。
 ふいに彼女の心をショーウィンドウが捕らえる。
 そこは最新の愛らしいボブカットの写真が飾られているヘアサロンで、アンジェリークは誘われるままに中に入っていった。

 新しいヘアスタイルなんていいかもしれないなあ・・・。

 新しいヘアデザイナーに切ってもらうのに、王女の期待はいやがおうでも高まっていく。

 のんきな気分のアンジェリークをよそに、迎賓館は大騒ぎになっていた。
 王女がいなくなり、最初はトイレなどに行っていると思われていた。
 だが一時間過ぎても戻ることはなく、大脱走が発覚したのは、アンジェリークが消えてから実に二時間が経過していた。
 部屋の窓からつり下げられたローヴの紐と、お小遣いを入れた財布がなくなっているのが、”脱走”の何より物証拠である。
 警備も完璧だった上、その上2時間経っても、脅迫電話の一つもないのだから、決定的だ。
 パリロー夫人からアリオスにすぐコンタクトが計られる。
「アリオス中佐! 姫様が脱走してしまったのです!!」
 これぞ晴天の霹靂、寝耳に水。
 アリオスは一瞬険しい表情をした。
「判りました。パリロー夫人、あなたはそこで待機をしておいて下さい。出入りの業者が、いなくなった時間にトラックなどを出したか至急調べて下さい。そしてそれがどの方面に向かったか。いいですね!」
「はいっ!」
 アリオスは一端携帯電話を切ると、大きく深呼吸をする。

 脱走するなら言えよ・・・、一緒に着いていってやったのに。
 アンジェリーク・・・。

 王女がいなくなり、アリオスは非常にいらいらする。
 いなくなっただけではなく、自分に一言も言わずにいなくなった王女に神経が苛立つ。
 冷静沈着を誇るアリオスには、珍しいことであった。
すぐに携帯が鳴り、アリオスはすぐに出る。
「はい。アリオスだ」
「小麦粉業者のトラックがその時間にはいたそうです。何でも街の中心部近くにトラックは向かったらしいです」
「サンキュ。それに乗って逃げ出したかもしれねえ。残った警備のものに、中心部の捜索にあたらせてくれるよう指示を出してくれ」
「はい」
 アリオスは的確に指示をした後、一端電話を切った。
 冷静になるため、再び深呼吸をする。
 アリオスは街の中心に向かって、駆け出し始めた。

 あいつどこに行ったんだ!?

 アリオスはアンジェリークがふらふらと入りそうな、店を覗きこんでみる。
 ふと、アリオスは見覚えのある姿をヘアサロンで見掛けた。
 アンジェリークが肩までにボブカットにしているではないか。
「とってもお似合い〜! 髪が遊んで」
「あ、有り難うございます」
 担当のヘアデザイナーに褒められると、何だか照れくさくなる。
「今夜ね、セレスティアの川辺の船で深海パーティがあるの。あなただったら深海女王コンテストに出場したら間違いなく優勝よ! ロマンティックだから是非来てね〜!」
「はい」
 アンジェリークは笑顔で挨拶をしてから、ヘアサロンから出ていく。
「アンジェリーク!」
 声をかけられて、アンジェリークは驚いて息を飲んで顔を上げると、アリオスがいた。
「アリオス・・・」
「脱走犯」
 サングラスのままのアリオスの表情は伺い知れないが、冷静な低い声は、かなり怖い。
「あんなことがあった後で、外出は控えるように言っていたはずだ…」
「でも…、外があまりにも気持ちよさそうだったから…」
 静かな怒りを感じ、アンジェリークは躰を震わせる。
 腕を掴まれる雰囲気があったので、咄嗟に身を返した。
 だが。
「逃げるな」
 更に冷たい声で言われると同時に、その華奢な腕を掴まれる。
 そのまま無言で手を引かれて、アンジェリークは連れていかれる格好になった。
 肩までに切った髪がふわふわと揺れる。
「似合ってるぜ、その髪」
「有り難う」
 やっぱり大好きな男性に言われると違うものだ。
 アンジェリークは頬を赤らめると、恥ずかしそうにアリオスを見た。
「強制送還?」
 不安げにアンジェリークは言うと、アリオスに涙目を向けている。
 アリオスは、子犬のような瞳を浮かべてくる幼い女王に、心のどこかで惹かれる自分がいるのを、彼は十分に理解していた。
 首席警護感としてではなく、ひとりの男としての思いが心の中に広がってくる。
 アリオスの心は決まった。
「・・・来い」
 手を更に握り締めて、アリオスは強引に進んでいく。
「連れ戻すの?」
 次の瞬間、アリオスは振り返った。
「デートだ」
 この瞬間、アンジェリークの笑顔が一気に晴れ上がる。
「ホントに!?」
「ああ。スリルを一緒に味わおうぜ?」
 アリオスは携帯の電源を切ってしまう。
「これで、おれはおまえの警備担当者ねえ。ただのアリオスだ。おまえも王女ではなく、ただのアンジェリークだ。いいな?」
「うん!!」
 この瞬間に生きたい------
 ふたりは見つめ合い、お互いに情熱を注ぎ合う。
「どこに行きてえ? 何をしてえ? 今日一日は俺を恋人に思ってくれていい」
 夢が仮初の現実として目の前に現れる。これ以上ないとばかりの夢を、アンジェリークは見たいと思った。

 一生に一度しかないかもしれない・・・。
 だったら夢を叶えたい・・・。

 ずっとずっと夢見ていた光景が思い浮かび、アンジェリークはそれをうっとりと話す。
「一緒に歩きながらアイスクリームを食べたい・・・」
 そんなことははしたないとばかりに、今までのアンジェリークには考えられないことだった。
 だが、今ならきっと実現出来る。
「ああ。じゃあ食いに行こうぜ?」
「うん!」
 アンジェリークは幸せに浸りながら、アリオスを見つめる。

 神様、今日の素晴らしい夢をいっぱい叶えて下さい。

 To Be CONTINUED…
コメント

「王家の恋」。今回はアンジェリークがお姫様です。
甘く切なく美しい恋物語をお届けする予定ですので、お楽しみ下さいませ。
今回のアリオスもステキに格好良い予定です。
正統派のお話です〜。
ご期待下さい(笑)
アリオスさんのかっこよさをかきつつ、
ロマンティックにしたいな〜



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