5
「暑くなってきたな」 「うん」 アイスクリームスタンドまで歩くのに、汗ばむような陽気だった。 ふたりがお互いの手をしっかりと握りあっている部分も熱いが、それでもお互いに離したくはない。 一瞬、一瞬が、お互いにとって貴重な時間だった。 「アリオス! ほら! アイスクリームスタンドがあるわ!」 「ああ」 丘の上にある公園にいく階段の入り口で、アイスクリームが売られている。 冷たくてとても美味しそうだ。 先程まではアリオスが手を引っ張ってくれていたが、今度はアンジェリークが手を引っ張る番だ。 アリオスは苦笑しながら、アンジェリークの後を着いていってやった。 「ジェラート」 アンジェリークは喜びいさんで注文し、僅かに持ち出したお小遣いをそこで出した。 本当に初めて買い物をする子供のように、アンジェリークは興奮気味だ。 アイスクリームを渡された瞬間、王女の表情は輝かしくて、可愛らしかった。 「アリオスは?」 「俺はミネラルウォーター」 アリオスはスタンドでミネラルウォーターを買い求めた。日差しがきつくなり、とうとうアリオスはジャケットを脱いでしまう。 そのシャツの姿が眩しいほど素敵で、アンジェリークは目を見張った。 「アイスとけちまうぜ?」 「あっ!」 アンジェリークは驚いてアイスクリームを慌てて舐める。 「上にあるベンチに行こうぜ」 アリオスに手を握られて、そこまでひっぱられていく。 若葉の香がする風を感じながら、心地好くて甘い気分に浸った。 ベンチに座った後、夢見るような気分でアンジェリークは周りを見つめる。 何もかもが薔薇色に輝く瞬間だ。 アイスクリームを自分の手で食べながら、ベンチでゆったりとする。 当たり前のことかもしれないが、アンジェリークにとっては夢見る瞬間だった。 アイスクリームの冷たさが口の中に広がり、ふわふわと何とも言えない幸福感を味あわせてくれる。 「美味いか?」 「うん、とっても!」 彼女が笑顔で答えると、アリオスは目を細めた。 本当は、ごくごく普通のこういった生活を送っているのが似合っているのかもしれねえな・・・。 アリオスがアンジェリークを見つめると、彼女も微笑んでくる。 「やりたいことは他に何がある?」 「もういっぱい! 一日ではきっと出来ないだろうけれど・・・。小雨の中、スキップしながら歌を歌いたい、ローラーコースターに乗ってみたい・・・、オープンカフェに行ってみたい」 夢を語っているアンジェリークは、とても美しく思える。 「・・・私の夢だわ・・・」 「だったら、その夢叶えようぜ。ひとつずつ」 アリオスは、アンジェリークの瞳を覗きこむ。 彼の持つ瞳が力強く輝いて、それが叶うような気がする。 大きく頷いて、アンジェリークは笑いかける。 「行こうぜ? オープンカフェでメシ食って、ローラーコースター」 「素敵!!!」 アンジェリークはアリオスの提案に手を叩いて喜んだ。 「ほら、アイスクリーム付いてるぜ?」 「あ・・・」 アンジェリークの口の周りに付いているアイスクリームを、アリオスは指でついっと取って、舐めてしまう。 「甘いな」 そのしぐさひとつにもアンジェリークはどぎまぎしていた。 「食ったら行くからな。あ、とけねえようにしっかりと食えよ?」 「うん」 アリオスは、一生懸命アイスクリームを食べるアンジェリークの姿が眩しくてしょうがなく感じる。 明るく澄んだ青空のように感じた。 「食べたわ!」 「じゃあ次はオープンカフェだ」 アリオスが手を引くと、アンジェリークは立ち上がる。 ふたりはどこから見ても恋人同士のように見え、誰もが羨望のまなざしで見つめていた。 「凄い! 素敵なオープンカフェね? どうしてこんな場所を知っていたの!?」 オープンカフェに来るなり、アンジェリークは感嘆の声を上げた。 「警備責任者の特権」 アリオスはにやりと笑うと、アンジェリークを引っ張って中に入っていく。 風がそよぐ良い位置を見つけると、そこに陣取ることにした。 「何を食いたいんだ?」 「やっぱり、サンドイッチ系かなあ・・・」 大きな瞳をくりくりとさせながら、王女はメニューに見入っていた。 結局、ふたりともオープンサンドを頼み、飲み物も好みのものを頼む。 サンドイッチが来るなり、アンジェリークは瞳を輝かせた。 「いただきます〜!」 手を合わせてここは行儀良くしてから、大きな口を開けてサンドイッチを食べる。 「美味しい〜!!!」 空気を吸いながら大きな口を開けて食べるのは、なんと美味しいのだろうか。 アンジェリークは、幸せと美味しさをしっかりと噛み締める。 「こんなこと、いつもだったらはしたないって怒られてしまうけれど、こんなに気持ち良くって自由なんだって思います」 「アンジェリーク・・・」 たとえ、口の周りを食べカスだらけにしていても、この瞬間のアンジェリークは美しく思えた。 誰よりも何よりも美しい。 じっと真摯にアリオスに見られているのが恥ずかしくて、アンジェリークは思わず頬を染めた。 「おい、すげえぜ口の周り」 「あっ・・・」 アリオスの指が延びてくるだけで、官能の余り目を閉じる。 アンジェリークはこの瞬間が永遠に続けばいいと願わずにはいられなかった。 アリオス…。 私の一番の夢は、あなたの側にいることなのよ…。 目の前にあるアリオスの顔を見つめると、太陽の光よりも眩しく感じる。 彼が目線をあわせてきたので、アンジェリークはどきりとした。 「もっといいところに連れて行ってやるからな?」 「はいっ!!」 まだまだ時間はある----- アンジェリークは次の想い出創りに思いをはせていた--------- To Be CONTINUED… |
| コメント 「王家の恋」。今回はアンジェリークがお姫様です。 甘く切なく美しい恋物語をお届けする予定ですので、お楽しみ下さいませ。 今回のアリオスもステキに格好良い予定です。 正統派のお話です〜。 ご期待下さい(笑) アリオスさんのかっこよさをかきつつ、 ロマンティックにしたいな〜。 |