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心地が良い疲労が躰の奥底から流れ落ちてくる。 私はそれに導かれるように、ゆっくりと目を開けた。 「…アリオスお兄ちゃん…」 アリオスお兄ちゃんと視線が絡み合う。あんなことをした後だったせいか、目を合わすだけだけでも恥ずかしい。 「おはよう」 「…おはよう」 恥ずかしくて半分上掛けで顔を隠しながら挨拶をすると、アリオスお兄ちゃんは笑って私の唇にキスをした。 朝だから軽くそしてカフェオレのように甘めに。 少しひげがチクチクして、痛かった。 アリオスお兄ちゃんは、はにかむ私を可笑しそうに笑うと、ベッドから降りた。 何も身に着けていないアリオスお兄ちゃんの躰は、まるでアポロンの彫刻のように美しい。思わず見とれてしまう私は、ちょっといやらしいのかな? 大好き…。 そんな言葉が自然と心から溢れてきた。 アリオスお兄ちゃんは裸のまま、部屋を出ていってしまう。 「アリオスお兄ちゃん、それはまずいんじゃ…」 「シャワーを浴びるの。おまえも来いよ。待ってる」 私も、少し重い下半身を引きずりながら、下着とパジャマを着込んだ。 …何だかやっぱり恥ずかしい気分になる。 えっち…という軽々しい言葉でなんて片付けたくはない。ちゃんと愛し合ったんだ…。 躰の奥は何だか鈍い痛みが走ったけれども、私は、とても幸福だった。 身支度を終えると、下に降りていく。 シャワーの音が聞こえる。ちっともさわやかじゃない。どこか官能的なものを感じてしまい、私はドキドキした。 「おい!」 バスルームの向こう側から、アリオスお兄ちゃんの声が聞こえる。私はかなりドキリとした。 「何?」 私が応えると、アリオスお兄ちゃんはバスルームから顔を出した。 「汗、流してやろうか?」 イキナリのドッキリ発言に、私は真っ赤になる。それはかなり恥ずかしくて、私にはまだまだ出来そうにない。 それに…、これ以上求められたら、かなり痛くなる。今も下腹部はかなり痛い。 「ひ、ひとりで…」 思わず声を上擦らせてしまう。私が真っ赤になっているのを、アリオスお兄ちゃんは楽しんでいるようだった。 「…また、今度…」 「お袋やばあちゃんが居るのに? チャンスは今日だけだぜ? アンジェ」 「…でも、…痛いもん」 私はそれこそ消えそうになる声で言う。恥ずかしさが、天下一品に盛り上がる。 「…そうか。だったらまた今度な。俺は出てやるから、ほら、さっさと浴びろ」 「…うん」 アリオスお兄ちゃんはバスルームを空けてくれたけれど、程よく鍛えられたアリオスお兄ちゃんの躰に雫が伝って、私だってかなり変な気分になった。 アリオスお兄ちゃんの鍛えられた胸に、そのまま手を這わせてしまいたくなる。それを何とか押し止めて、私はバスルームに逃亡するように入った。 汗をざっとシャワーで流し、サッパリとする。だけどぴりぴりする中心部分は変な感じだった。 汗を流してバスルームの中で、素早く下着を身につけて身支度をする。 裸のままアリオスお兄ちゃんの前に出るのは、相当恥ずかしかった。 洗面室に出ると、アリオスお兄ちゃんはちょうど歯を磨いていた。私もその横に立って歯を磨く。 「折角のチャンスだったのによ」 「何が?」 「おまえと風呂に入る」 アリオスお兄ちゃんは悪びれる様子など一切なく、いけしゃあしゃあと凄いことを言ってのける。そこがアリオスお兄ちゃんの凄いところ何だろうけれど。 「ダメだもん」 「じゃあ、今度は一緒にホテルだな」 アリオスお兄ちゃんは本当に反省の色が見られない。…だけど、ちょっとだけなら、いいかなあって思う私も、相当ダメダメだと思う。 「今度はもっとロマンティックに迫ってやるよ」 「うん」 言うなり、アリオスお兄ちゃんはハミガキ粉の泡だらけの口のままで、私に触れるようなキスをしてきた。 「きゃあっ!」 唇を離された後も、私は泡でベタベタになっていた。全く、もう! 怒っても、やっぱり好きなんだけれど。 「…キタナイ」 「誰だよ、この唇で、あんなことやこんなことをして貰って、喜んでいたのは?」 意地悪とからかいの含んだアリオスお兄ちゃんの言葉に、私はわざと拗ねた。 全く、そんな恥ずかしい台詞を、よく素面で言えるものだわ。 「ハミガキ粉まみれは嫌だもん」 私は拗ねるように言うと、アリオスお兄ちゃんにそっぽを向いた。 アリオスお兄ちゃんは一足早く歯を磨き終えて、さっぱりとする。 「髭は剃らないの?」 「仕事午後からだし、表に出るやつじゃねえから」 「私は嫌だ」 私の言葉を意に解さないように、アリオスお兄ちゃんは眉根を寄せた。 「何でだよ」 「キスする時、チクチクして痛いんだもん。痛いのは嫌」 「しょうがねえな。お姫様は」 アリオスお兄ちゃんは呆れながらも、横で髭を剃り始めてくれる。 私はそれを嬉しく想いながら、うがいをして、顔を洗った。 「これで合格か?」 アリオスお兄ちゃんは私を抱き寄せてくると、優しくキスをしてきてくれた。 甘いとろけそうなキスは、私にとっては最高級のものだ。 唇を離してもらって、私はくすくすと笑ってしまう。 「合格よ」 「そりゃどうも」 私はくすくすと笑いながら、アリオスお兄ちゃんにしっかりと抱き着いた。 やっぱり、アリオスお兄ちゃんと抱き合うのは気持ち良いと想いながら。 「アンジェ、こうやってずっと色々出来たらいいな」 「うん。中々出来ないからね」 私たちは名残惜しいかのように、何度も抱き合ってキスをする。 大好き。 本当に大好きよ。 私は、アリオスお兄ちゃんにからみ合いながら、キッチンに向かった。 朝食は、いつものように和食を作ったが、少し照れ臭い。家族の分だけを作るのは平気なのに、何故だかアリオスお兄ちゃんと二人だけの分は、妙に構えてしまって恥ずかしかった。 いつものように出し巻き、野菜の炒めた物、具が沢山の味噌汁に、漬物と納豆、もずく酢を加えた我が家の定番メニュー。 バランスが取れているせいか、私もアリオスお兄ちゃんも病気知らずだ。体調もすこぶる良い。 アリオスお兄ちゃんと顔を合わせて食事を取る。 やっぱり恥ずかしい。 あんなことをした後に一緒にご飯を食べるのは、照れ以外に何もない。 いつも夢見ていた。 いつかアリオスお兄ちゃんとこんなことになったら、ふたりでモーニングコーヒーを飲んで、甘いキスを交わし合いたい。って。 実際にはそんなロマンティックな訳はなく、ふたりで定番の朝食をつついている。 ベッドでいちゃついたり、綺麗な朝陽をふたりで眺めたりしたい…。 だけど現実は、半分ロマンティックで半分痛かった。 初めては痛いって聞いていたけれども、まさかあれほどだとは思わなかった。 「…やっぱりうちの飯は美味いな」 「ホント?」 「定番過ぎるし、スマートだとは言い難いが、バランスはとても取れているだろうが。躰にも良いし、やっぱりこの味は俺にとっては良いもの何だって思うぜ」 アリオスお兄ちゃんは美味しそうに食べてくれて、私の朝食を褒めてくれる。それは嬉しいけれども、やっぱりもう少し夢に近い朝だったらいいのに。 「…私、アリオスお兄ちゃんともっとロマンティックしたいよ」 私は拗ねるように甘く言う。家族と同居している以上は、中々難しいことだけれども。 「そうだな…。いちゃいちゃしてえな、おまえと」 アリオスお兄ちゃんはそっと言うと、私にキスをしてくれる。宥めるようにキスをされると、私のご機嫌も直る。 だけど、唇を離されると。 「アリオスお兄ちゃん! 納豆食べたでしょう!」 私の口の周りが納豆の糸でベタベタになる。アリオスお兄ちゃんはしてやったりな顔をしたから、私は余計に悔しかった。 「そのうち、おまえとふたりで住んで、いちゃつくことが出来るようになるさ」 ふたりだけで一緒に住む。 そう考えるだけで、私の胸はドキドキする。 「約束よ」 「ああ。約束する」 アリオスお兄ちゃんは甘く言うと、納豆の余韻のある唇で、私にキスをくれた。 |
| コメント アリオスさん。 納豆の口でアンジェにキスするのは止めましょう(笑) |