From Me To You

3


「なあ、今からちょっと時間ねえか?」
「うん、大丈夫よ」
 ”偶然”を装っての数回目の戯れの時、アリオスの申し出に、アンジェリークは胸にときめきすら覚えた。
 いつものカフェから出て、アリオスの後をぽてぽてと着いていく。
「どこに行くの?」
「まぁ、行ってのお楽しみだ」
 近くにアリオスは車を止めており、それにゆらり揺られる。
 アリオスの車に乗るのは初めてで、とても楽しい気分になる。
「アリオスって運転上手いんだ」
「これぐらいは当たり前だろ?」
「だって、乗り物に弱い私が酔わないんだもん」
 これは正直凄いと思った。
 父親の運転する車ですら酔うことがあるのに、不思議とアリオスの運転は酔わなかった。
「俺の運転がおまえの肌にあってんだろうな」
「…うん、そうね」
 そう思うと嬉しかった。
 車は15分ほど走って、街から少し離れた閑静な住宅街に止まった。
 アリオスが車を駐車したのは、アンティークな住宅の車庫。
 200年ほど前の重厚な外観の住宅のようだ。
 石造りの邸宅は時代を超えて存在し、包み込んでくれているように思える。
 その立派さと素敵さにアンジェリークは暫く見とれずにはいられなかった。
「この家には小さなプールがある。入ろうぜ」
「えっ!? 水着持ってない!!!」
 急にアリオスに言われてもとばかりに、アンジェリークはどきまぎとしている。
「裸で入ればいいじゃねえか。ここは端だし、そのうえ、他の家からは覗けないようになっている」
 手を取られてドキリとする。
 まだキスだってしたことがないのに、大好きな男性に肌を魅せるのが恥ずかしい。
 プールに入ると、なるほど納得出来る。
 プールはまだ水が入ったばかりで、気持ち良さそうだし、プールの周りには高く白い柵があり、それを囲むように高い木と塀が張り巡らされていた。
「隣は無人だからな。大丈夫だ」
「うん・・・」
「だったら泳ぐか。おまえの泳ぎの成果を知りたいしな」
 横でアリオスが素早く服を脱ぎ始める。
「ほら」
 一糸纏わぬ堂々とした姿のアリオスに頬を赤らませ、瞳を潤ませながらアンジェリークはアリオスを見た。
「・・・下着のままでいい・・・?」
「構わないが、帰りは下着はねえぞ。まあ、俺が車で送ってやるから構わねえが・・・」
「うん、でも下着のままがいい・・・」
 まだまだ白い肌をアリオスに晒すのは恥ずかしくて堪らない。
 アンジェリークも服を脱ぎ捨てると、下着姿になり、アリオスの手を取った。
 夏の夕方の涼しい気候の中で、二人はプールに飛び込む。
「おまえの水泳の成果を見せろよ」
「うん」
 足をぱたぱたとしながら、アンジェリークはアリオスに泳ぎを披露する。
 ”河童”というほどではないが、そこそこは泳げるようになっていた。
「上手くなったな」
「ありがとう」
 褒めてもらって凄く嬉しい。アンジェリークは素直にときめく気持ちになれた。
「アンジェ、一緒に泳ごうぜ」
「うん」
 手を取られて、素直に応じられる。アリオスが手加減してくれながら、一緒に泳いだ。
 心地好くてしょうがないくらいだ。

 アリオス、なんて綺麗なのかしら・・・。
 筋肉なんかひき締まって、無駄なところがないわ・・・。
 うっとりしちゃう。

 アリオスに見とれながら、アンジェリークは泳ぎを楽しむ。
 まるで水の妖精になった気分で、とても楽しかった。
 手を繋いだまま深く潜った後、ふたりは大きく飛び上がる。
 水面に浮かび上がって、しっかりと抱き合う。
「脱いじまえよ・・・」
「あ・・・」
 アリオスが下着に手をかけてくる。心が奔放になり、素直に下着を脱いでしまった。
「おまえ、すげえ綺麗だぜ…。水の精みてえだ」
「アリオス・・・」
 アンジェリークは栗色の髪に水がしたたる。
 それをアリオスが指で掬うと、胸の奥が苦しくなる。
 ぎゅっと裸の胸に抱き締められて、息が詰まった。
 好きという感情が躰中に巡っていく。
 血が熱く巡って、指先までもアリオスが好きだと感じる。
 見つめあった瞬間に、火花が飛び散った。
 アリオスの顔が近付いてくる。
 もう子供なんかじゃない。
 ひとりの女として、アリオスが好きだ。
 初めてのキスにアンジェリークは胸の奥が甘酸っぱくなる。
 アリオスの唇が重なった。
 その冷たさに、アンジェリークはうっとりとなる。
 キスはこんなに蕩けるほど素敵なんだろうか。
 アリオスの肌も何もかもが素晴らしく感じた。
 触れるようなキスから、包み込むようなしっとりとしたものに変わる。
 途端にその躰が震えた。
 アリオスに掴まっていないと躰が上手く支えることが出来ない。
 アンジェリークはアリオスにぴったりと掴まって、とろんとしたキスを受けた。
 息が出来なくなるほどの甘いキスに、アンジェリークは肩を震わせる。
 唇がようやく放されると、アンジェリークはしっかりと抱き締められた。
「アリオス・・・」
 躰がぴったりと合わさり、何だか甘くて気分が高まってくる。
 触れる度に、アリオスの熱い部分が堅い感触で当たる。
「アンジェ、プールを出よう」
「裸なのに?」
「ああ」
 アリオスはアンジェリークを抱き上げると、脱ぎ捨てた服だけを拾い、プールを出てどこかに向かう。
「どこに行くの?」
「良い所」
 あくまで秘密のようで、アリオスは微笑みながら屋敷の中にはいっていった。
 裸の男性にお姫様だっこをしてもらうのも初めてで、妙に緊張する。

 なんだか…恥ずかしいけれど、嬉しい…。

 アンジェリークは頬を染めながら、甘い期待に頬を染めた------
コメント

夏休みの恋物語です。
今年は甘酸っぱい恋をお届けします〜。

ちなみにタイトルは久々にBeatlesの初期の曲からです。

次回は別館になる予定です(笑)





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