中編
ふたりはどちらからともなく、唇を重ねて来る。 何度も唇を重ねあって、離れていた時間を埋めていく。 他人からみれば、三日間なんて僅かな時間かもしれない。 しかし、公瑾と花にとっては、かなり長い時間だった。 少しでも長い時間であると、ふたりはそれだけで切なくなるほどに愛し合っているのだから。 唇を重ねる度に、水音が大きくなる。 お互いに舌を絡ませながら、熱を交換しあった。 お互いに呼吸が出来なくなるのではないかと思うぐらいにキスを続けた後、ようやく唇を離した。 花は既に躰が官能でぼんやりとしている。 公瑾に甘えるようにして逞しい胸に、花は顔を埋めた。 「このままあなたと朝まで愛し合いたいですが…、皆が帰還を祝うちょっとした宴を準備してくれていますからね…。宴のあと。ふたりだけでゆっくりしましょう」」 「…はい」 このままふたりが欠席をするわけにはいかないのだ。 しょうがないとばかりにふたりは苦笑いを浮かべると、宴の支度をした。 宴の間、公瑾はさり気なく花の手を握り締めていた。 早く花とふたりきりになって、甘くて激しい幸せな時間を過ごしたいと、ただそれだけを考えていた。 公瑾は、宴は半分程度しか楽しむことが出来ず、その後の時間ばかりを考えていた。 何度も花の横顔を見つめる。 本当に美しくなったと、思う。 夫の欲目を引いたとしても、綺麗だと思わずにはいられない。 出会った頃は、取り立てて綺麗だと思ったことなどは一度としてなかった。 それが今やどうだろうか。 公瑾を夢中にさせて、すっかり骨抜きにしてしまっている。 花にならば骨抜きにされても構わないと、公瑾は思わずにはいられなかった。 本当に綺麗だ。 幼い子供のようだった容姿は、公瑾に女にされ大人の女性としての嗜みをつけるごとに、美しくなった。 今や花はかなりの美女だとの噂があるほどだ。 それ程までに綺麗になったのは、公瑾は誇らしかった。 公瑾のまなざしに気付いたのか、花は穏やかに微笑んだ。 その微笑みは本当に可愛くて美しくて、公瑾は夢中になって見つめてしまう。 花ばかりを見つめるのは、もう都督府の部下たちにはバレている。 誰もが微笑ましいと見ているのは、少し癪に障る。 いよいよ宴も形式上は終わり、誰もが好き勝手に楽しむ時間になる。 ここまでで今夜は退席だ。 それは誰もが解っている。 公瑾は花の手を強く握り締めると、そのまま室へと向かう。 花も早く公瑾とふたりきりになりたかったのは同じらしく、「退席して良かったのですか?」などという無粋なことは訊いては来なかった。 花もそれだけ自分を求めてくれているのだと思うと、公瑾は嬉しかった。 ふたりとも室に向かうまでの間、何も話さずに、ただずっと手を握り締めていた。 愛している。 そばにいたい。 その気持ちが手のひらを通じて伝わってきた。 ようやく室に入ると、ふたりはお互いに穏やかな笑みを滲ませて、しっかりと抱き合った。 「…ようやくあなたをしっかりと抱き締めることが出来て嬉しいですよ…」 「私も…公瑾さんをこうしてしっかりと抱き締めることが出来るのがとても嬉しいです…」 「花…」 お互いの温もりを感じられるだけで、こんなにも幸せなことはない。 肌から感じられるお互いの想いに幸せを感じながら、ふたりは唇を重ねた。 いつもならばしっとりと唇を重ねるキスも、今日に限っては激しくなる。 熱く激しく唇を吸いあい、お互いに息を乱しながら、舌を絡ませ合う。 離れていたのは本当に短い時間であったのに、とても切ない時間だった。 こうして口づけをするだけで、離れていた時間が埋まってゆくような気分だ。 何度も何度もキスをして、ふたりはお互いをしっかりと抱き合う。 お互いに情熱がたぎる相手であると同時に、一緒にいるだけで心地好く優しい気持ちになる。 こんな理想的な相手は、他にいないとお互いに自覚をしている。 本当に狂ってしまうぐらいに、お互いに夢中になっている。 花は公瑾という運命のひとに出会えたことを、心から感謝していた。 息が限界になったところで、ふたりはようやく唇を離した。 花は全身が震えてしまうぐらいに感じていた。 キスだけでいとも簡単にここまで感じることが出来るなんて思ってもみなかった。 「…花…」 公瑾は花の頬を優しく撫でると、額にキスをくれる。 花がこうしてロマンティックに優しくされることが好きなことを、公瑾は誰よりもよく解っているのだ。 公瑾は花を軽々と抱き上げると、寝台へと連れていった。 そのまま寝台に寝かされると、公瑾は直ぐに組み敷くように抱き締めてくる。 ずっとこうしたかったのだと、態度で伝えてくれていた。 花が甘えるように公瑾を抱き締めると、息を乱して激しく口づけてきた。 お互いにキスだけで感じてしまっても構わないから、激しく愛を交換しあう。 舌を絡ませあい、唾液をお互いに交換しながら、感じる部分を愛撫してくる。 キスだけで躰の中にある総ての細胞が、沸騰してくるのを感じていた。 キス以上のものが欲しい。 公瑾の器用な指先が、花の漢服の袷に忍び込んだ。 肌を直に触れられて、うっとりとしてしまう。思わず甘い呻き声を上げると、公瑾は息を乱した。 「花、私を余り煽らないで下さい…」 「…煽ってなんか…」 「その可愛い声が煽っているというんですよ…」 公瑾は花の耳朶を噛みながら、優しく器用に着ているもの総てを脱がしてくる。 器用に裸にされてしまい、花は恥じらう。 「あなたは本当に美しい…」 公瑾は花を抱き締めると、自らの衣服を器用に脱ぎ捨てた。 お互いの熱をダイレクトに感じながらしっかりと抱き合う。 愛撫をされたわけではないのに、公瑾に抱き締められているだけで、花は全身が潤った。 キスだけでは足りない。 それぐらいに公瑾を直に欲しかった。 公瑾もまたそのようで、息を乱しながら、花の潤んだ中心に触れてくる。 触れられるだけで痺れる快感が溢れてくる。 花は熱い喘ぎ声を上げながら、躰を軽く揺らした。 「…花…」 公瑾が掠れた声で名前を呼びながら、敏感な中心を撫でて来る。 その刺激だけで。見つめてが溢れてきた。 「花…既に準備が出来ているようですね…。私はあなたが欲しくてしょうがないです…」 「んっ…!」 公瑾は入り口に自分自身の欲望を押しつけてくる。 硬いモノで擦られて、花はくらくらしてしまう。 淫らな刺激に、花は躰を震わせた。 公瑾に愛撫されるだけで、泣きそうになる。 それぐらいに感じてしまう。 公瑾はもう爆発寸前だというのに、意地悪にも花の欲しいものを与えてはくれない。 ただ入り口で刺激を与えてくるだけだ。 「…公瑾さんっ…!」 「…どうかしましたか…?」 公瑾は苦しげなのに、意地悪を滲ませている。 余裕がないのにどうしてここまでクールでいられるのだろうかと、花は思う。 それが悔しい。 「お願いです」 「何を…?」 「解っていますよね?」 「いいえ、分からないです…。花、欲しいものはきちんと言わなければ、手に入らないですよ?」 なんて意地悪なんだろうか。 話している間も、公瑾は花の入口を煽るようになぞっている。 花は欲しくて入口をひくつかせながら、公瑾を求めた。 「…花…あなたの言葉で聞きたいです…」 公瑾の言葉に、花は泣きそうになりながら呟いた。 「…あなたが欲しいです…」
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