*夢中人*


「今夜のあなたは、言葉では表せないぐらいに…、綺麗です」

 いつもは冷たいくせに、今夜の公瑾はとても甘くて熱い言葉を囁いてくれる。

 いつもならば凍り付いてしまうのに、今夜は逆に総ての氷が溶けてしまうのではないかと思う。

 花は躰も心も熱くなるのを感じながら、愛するひとを見つめる。

 すると思い切り抱き締められてしまい、花は息が出来なくなる。

「…あなたは罪なぐらいに美しい…」

 公瑾は静かに呟くと、花の顎を持ち上げる。

「…今宵ほど強く思ったことはありません…。あなたを誰にも渡したくはないと…」

「公瑾さん…」

 公瑾に迸る情熱をぶつけられて、花は情熱でくぐもったまなざしを向けた。

「…花…、愛していますよ」

 公瑾は掠れた声で呟くと、花の唇を荒々しく奪った。

 いつも以上に激しい口付けに、花は呼吸が上手くいかない。

 いや、呼吸をすることすら忘れていたのかもしれない。

 公瑾と何度も唇を吸い合い、お互いの情熱をぶつけ合う。

 舌を絡ませ合い、愛を確かめる。

「…花…」

 お互いに呼吸が上がるまでキスを交わした後、ふたりはただじっと見つめ合った。

 情熱的に見つめ合っているといっても良かった。

「…あなたが欲しいです…」

 公瑾は珍しく真直ぐ言うと、花を軽々と抱き上げると、そのまま自室へと向かう。

 本当に愛し合っているのだということを、花は感じずにはいられない。

「…花…、あなただけが欲しいのです…。私は…」

「…公瑾さん…。私はずっとあなただけを求めていますよ…」

「…花…」

 心がぴったりと重なる。

 ふたりで同じ想いをしていることを、感じずにはいられなかった。

 公瑾は花を寝台に横たえると、綺麗に漢服を脱がしてくる。

 手慣れているから、花は何だか拗ねるような気持ちになった。

「…公瑾さん…慣れていますね…」

 ほんのりと拗ねるように言うと、公瑾は苦笑いをした。

「…私もそれなりの齢を重ねた男ですからね…。ですが…、そばに置きたいと思ったのも、緊張をしているのも、あなただけですから…」

 冷たくて落ち着いた声に、温かさが満ちた柔らかさが加わって、花の心を蕩けさせる。

 ドキドキしていると、公瑾はくすりと笑った。

「緊張していますか…?」

「…少しは…」

「大丈夫。私も同じぐらい緊張していますから…」

 公瑾は花の手を取ると、そのまま自分の胸元に持ってゆく。

「…ほら…でしょう…?」

 公瑾も同じように緊張してくれているのが、花には嬉しかった。

「…同じです…」

「でしょう?」

 公瑾は花の漢服を綺麗に脱がしてゆき、生まれたままの姿にした。

 月光のように美しくも厳かな公瑾の瞳に見つめられると、花は恥ずかしくなって全身を桃色に染め上げる。

 恥ずかし過ぎて、花は華奢な躰を捩った。

 綺麗な公瑾に見せるような代物ではないと思い、どうにかして隠せないものかと、花は考えた。

「…花…、恥ずかしいんですか…?」

「…恥ずかしいです…。綺麗じゃないから…」

 花の言葉に、公瑾は眉を顰める。何処か怒っているような気すらした。

「…あなたは、綺麗ですよ…。もっと自信をお持ちになって下さい…」

「…公瑾さん…」

 公瑾に言われると、ほんの少しではあるが、自信が胸の奥から滲んで来る。

「…だから見せて下さい…。私はあなたをじっくりと見つめたいのです」

「…花…」

 公瑾は静かな情熱が秘められたまなざしを、花に向けてくる。

「…花…、綺麗ですよ…」

 公瑾は熱い吐息を滲ませながら呟くと、自らの服を手早く脱いだ。

 余りに綺麗に脱ぐものだから、花は思わず見つめてしまった。

「…あまり見つめないで下さい…。私こそ…あなたに比べると、…いや、とても比べられるものではないんですよ…。あなたに比べると…、傷だらけで、あなたが怖がってしまうのではないかと…」

 公瑾は苦しげに言うと、溜め息を吐いた。

 公瑾の裸身には無数の矢傷がついている。それは彼が武官であるということを物語っている。

 やはり武官であるということもあり、うっとりとするぐらいに筋肉が美しくついていて、引き締まった綺麗な躰だ。

 本当に綺麗でうっとりと見つめてしまいたくなるぐらいだ。

「…公瑾さんは、とても綺麗です…」

「あなたは恐ろしくはないのですか? 私の傷が…」

「はい。だけど公瑾さんはとても綺麗です…。うっとりとしてしまうぐらいに…。これは本当に…」

 花は自分が思っていることを真直ぐ公瑾に伝える。

 本当に美しいと思ったから。

「…花…」

 公瑾はくぐもった声で呟くと、花を思い切り抱き締めてきた。

 肌と肌が直接触れ合って、ふたりは熱をシェアしながら、お互いの温かさを共有する。

 裸で抱き合うということが、こんなにも温かいなんて思ってもみなかった。

 本当に温かくて、花は思わず目を閉じる。

 裸で抱き合うだけでも幸せなのに、こうしてじっとしているだけで、なんて幸せなのだろうかと、思わずにはいられない。

 公瑾は花を組み敷くようにして抱き締めながら、唇を深く重ねてくる。

 こうして抱き合ってキスをしているだけで、なんて幸せなのだろうかと思う。

 満たされた気分になる。

 だが、お互いのキスが深くなるにつれて、満たされた気持ちが、欲望へと変化してゆく。

 もっと欲しいと喚いているようだ。

 公瑾の唇が、花の首筋から鎖骨へと下りて来る。

 まるで花な総てを貪るかのようだ。

 熱い欲望に、花はくらくらきてしまう。

 公瑾の手が花の乳房を包みこんだ。

 予想していなかった動きに、花は思わず息を飲まずにはいられない。

 公瑾は下から持ち上げるように、その柔らかさを味わうようにしてゆっくりともみしだいてゆく。

 思わず甘い吐息を吐き出した。

「あなたは柔らかくて…甘くて…私を惑わせます…」

 公瑾は息を乱しながら、花の柔らかな胸に顔を埋める。

 そのまま柔らかい胸を味わうように舌先で、ゆっくりと舐めてゆく。

「…公瑾さん…っ」

 花は痺れるような快楽に躰を震わせながら、公瑾にすがりついた。

「…花…、あなたはなんて可愛いらしいのですか」

 公瑾は情熱に任せて、更に激しい愛撫を繰り返してゆく。

 その熱さに、花は何度も躰を震わせた。

 お腹の奥が痺れるぐらいに感じる。

 公瑾を欲しいと思う心が、膨れ上がる。

 墜落するような快楽に我を忘れそうだ。

 公瑾は花を抱き締めながら、平らなお腹やほっそりとした脚にキスの雨を降らせてゆく。

 躰中をくまなくキスされて、花は愛されていることを実感せずにはいられない。

「…花…。あなたは私だけのものですから…」

「…公瑾さん…、あなたも私だけのものですよ…」

「…当たり前です…」

 公瑾は息を乱しながら呟くと、花の脚を大きく広げてゆく。

「あ、あのっ!?」

 余りに突然のことで花は戸惑わずにはいられなくなる。

 焦っていると、公瑾はくすりと甘い笑みを浮かべた。

「…花…あなたは私のものなのでしょう? だったら私があなたを味わい尽くしても問題はないはずです…」

 公瑾は声のトーンを落ち着かせて言う。

 公瑾の声は、花の全身を蕩けさせてしまうぐらいに艶やかで、抵抗なんて出来る筈がなかった。

「…花…、そうです、良い子ですね…」

 公瑾は掠れた声で囁くと、花の脚の付け根を思い切り吸い上げてきた。

「…やっ…!」

 躰がびくん、びくんと震えて、息が上がる。

 公瑾の愛撫に、花は理性すらも溶けてしまうのではないかと思った。



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