*愛し君へ*

3


 公瑾の屋敷の料理人はかなりの腕前らしく、花はどの料理も美味しく平らげた。

 こちらの料理の作り方も学ばなければならない。

 やはり妻として、公瑾に料理をしてあげたいと思う。

 本当に覚えるべきことが沢山ある。

 先ずはこの世界の言葉。

 正確には漢字をマスターしなければならない。

 そして都督の妻として相応しい礼儀作法。

 料理…。

 本当に沢山のことを学ばなければならないから、毎日が退屈することなく過ごせそうだ。

 花にとっては、刺激的な毎日のほうが楽しいからだ。

 花が微笑んでいると、公瑾は優しく尋ねてきた。

「花、随分と楽しそうですね…。何か面白いことでもあったのですか…?」

「沢山やることがあるので、ずっと楽しく過ごせそうだと考えていたんですよ」

「具体的には?」

「はい、漢字の勉強に、こちらの礼儀作法、美味しいお料理も習いたいですし」

「そうですね…。ですがあなたにはまだまだやることはありますよ」

 公瑾は何処か優しさを含んだ声で、淡々と呟いた。

「教えて下さいませんか?」

「…私の妻として、都督夫人として…、そして母として…」

 公瑾の言葉に、花は幸せが滲んでくるのを感じる。

 公瑾の子供ならさぞかし頭が良くて可愛らしいだろう。

「そうですね。沢山、やることがありますね。本当に飽きずに楽しく過ごせそうです」

「そうですね」

 公瑾はフッと微笑むと、立ち上がった。

「さあ、夕食は終わりですよ…。今からは…二人だけの時間を紡ぎに参りましょう」

 二人だけの時間。

 それがどのように官能的な時間であるのかを、花は分からないわけではない。

 恥ずかしいが、とっておきの時間には違いない。

 だが、初めての上、相手は一生愛し抜くことが出来るひとだ。

 緊張しないはずがない。

「花…、今日から私たちの寝室をご紹介致しますよ…」

 公瑾に手を取られると、そのまま寝室へと向かった。

 ドキドキし過ぎて旨く話せない。

 その上、喉がからからになるぐらいに緊張してしまっている。

 はっきり言ってガチガチだ。

 それに気付いているからか、公瑾はいつもよりもより強く手を握り締めてくれた。

「…花…力を抜いて下さい…」

 公瑾の蕩けるような甘いまなざしが向けられて、花はその場で卒倒してしまいそうになる。

 余計に呼吸が荒くなった。

 いよいよ部屋に入る。

 寝室に入るなり、公瑾に荒々しく抱きすくめられた。

「…公瑾さんっ…!」

 声を掠れさせながら、花は公瑾の抱擁に溺れてしまう。

 こんなにも激しく抱きすくめられたのは、初めてなのかもしれない。

「…花…。もう…我慢が出来ないぐらいにあなたが欲しい…」

 公瑾は切迫した愛情を花に見せつけると、そのまま激しく口づけてきた。

 キスだけでこのまま蕩けてしまいそうになる。

 立っていられなくなるぐらいに深いキスをされて、花は公瑾に縋り着いた。

 公瑾の力強い腕が、花の華奢な躰をしっかりと支えてくれる。

 キスをされた後、公瑾は花を静かな情熱に満ちたまなざしで見つめた。

 この瞳で見つめられたら、全身が情熱によって蕩けてくる。

「…花…。あなたを愛していますよ…」

 公瑾は優しく花に囁くと、そのまま抱き上げて来る。

 寝台に運ばれて、いよいよ熱情に満ちた世界が始まる。

 公瑾は器用に花の装束を脱がしにかかる。

 綺麗な指先が胸元を掠めて、花は震えた。

「…公瑾さん…」

 名前を呼ぶ声が震えると、公瑾はくすりと笑った。

「花、緊張しなくても大丈夫ですから…。私たちは愛を交換するんですから…」

「はい…」

 愛を交換する行為。

 花は幸せな気持ちに満たされるのを感じながら、公瑾を抱き締めた。

 生まれたままの姿で愛し合うのは恥ずかしいけれども、それ以上に幸せを感じる。

 公瑾は素早く自分の装束を脱ぎ捨てて、花を抱き締めてきた。

 お互いの肌と肌が重なり合う。

 温かくて、甘い感覚が花を満たす。

 公瑾は花に唇を重ねてきた。

 甘いキスについうっとりとしてしまう。

 最初は重ねるだけの甘いキスだったが、徐々に深みが増して来る。

 蜂蜜のよいなキスに花はとろとろになってしまいそうだ。

 躰の奥深くが甘く感じた後、もどかしい程の愛を感じた。

 公瑾と何度もキスをした後、体温より少しだけ冷たい唇が、花の首筋から鎖骨を捕らえる。

 背中がゾグリとしてしまうぐらいに感じる。

 思わず甘い声を上げると、更に公瑾の唇は肌を強く吸い上げてきた。

「…んっ、あっ…!」

 花の声を楽しむかのように、公瑾は更に強く肌を吸い上げてくる。

 まだまだ発展途上にある花の胸を、公瑾の手が触れてきた。

 下から掬い上げるように揉みしだかれて、胸が張り詰めてくる。

 花はつい呻き声を上げた。

「…あなたは本当に美しい…」

 公瑾は感嘆の吐息を吐くと、花をうっとりと見つめてくれる。

 愛するひとに称讃される。

 こんなにも幸せなことはない。

 花は幸せな気分に浸りながら、公瑾に艶のある笑みを向けた。

「そんな微笑みは、私以外の男には向けないで頂きたい…」

 公瑾は、花の固くなった胸の蕾に唇を吸い付ける。

 快楽が全身に満ち溢れて、花は背中を反らした。

 お腹の奥が鈍い痛みで支配されるぐらいに感じる。

 無意識に花は、公瑾に躰を擦り寄せていた。

「…花…」

 公瑾の声が今までにないぐらいに艶やかで甘く、官能的だ。

 甘美な声で名前を呼ばれるだけで、花は胸が痛くなる。

 公瑾の指先が、そっと熱い部分に伸びる。

 想像していなかった行為に、花は全身を飛び上がらせた。

「…大丈夫」

 公瑾の声は媚薬だ。

 花から力を削いでしまう。

 熱い中心に触れられて、どうして良いのかが分からなかった。

 敏感な場所に触れられると、途端に、欲望ともどかしいぐらいの快楽に満たされる。

 腰が何度も浮き上がって、公瑾を求める。

 花は呼吸を乱しながら、逞しい公瑾の肩にすがりついた。

 胸で呼吸をしなければならないほどに激しくなる。

 花は何度も深呼吸を繰り返す。

 下半身が痺れてしまうぐらいに感じてしまい、細胞までが震えた。

 今までに経験したことのない快楽に、花は頭がくらくらした。

 公瑾に触れられる度に、欲望と快楽がどんどん膨れ上がる。

 花は無意識に公瑾に躰を密着させていた。

 ふと公瑾の頭が中心に下がった。

 これから何が起こるのかを考える前に、激しい刺激が始まる。

 甘くて熱い液体を唇でさらわれて、舌先で中心が刺激される。

 公瑾の麗しいほどに美しい指先が、花の中心を押し広げてきた。

 痺れるような痛みが、花の全身を貫く。

 公瑾の指先は、花の入口をほぐすかのように、優しく労るように動いた。

 お腹の奥深い場所が、公瑾を求めて揺れている。

 もっと彼が欲しい。

 もっと近付きたいと呻いているように、花には思えた。

 呼吸が出来なくなるぐらいに追い詰められる。

 花はどうして良いのかが分からなくて、ただ快楽にその身を任すしかなかった。

 舌先での敏感な場所の刺激と、指先による刺激。

 本当にどうして良いのかが分からないまま、花は激しい快楽に飲み込まれてゆく。

 こんな刺激が、こんな快楽があったのかと、思わずにはいられない刺激だった。

 このまま公瑾が紡ぎ出す新しい世界に溺れていたい。

 このまま蕩けてしまえれば良いのに。

 花はもう与えられる快楽以外は何もいらないと思いながら、静かに墜落してゆく。

 幸せな墜落だった。




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