*ホワイトディの魔法*


 小松とのキスはとても官能的で、このまま崩れ落ちたくなる。

 だが、ここは、仕切られた空間ではあるが、眠っても良い場所ではなかった。

 仲居が食べた後を片付けにくる。

 止めたくはないが、止めなければならない。そんな場所なのだ。

 ゆきは緊張にうち震えながら、小松にしっかりと抱き付いて、そのキスを受けた。歯列を割り、丹念に口腔内を口付けてくる。

 舌を絡ませあって、お互いの情熱を交換しあう。

 熱くて甘いキス。

 ふたりの唾液が入り雑じり、官能的な水音が響き渡っていた。

 小松の甘い唇と舌の動きに、ゆきはこのまま崩れてしまいたくなった。

 小松は唇を柔らかく離す。唇を離されるだけで、溶けてしまいそうになった。

「……奥に行こうか……」

「奥?」

「言ったでしょ?ここでは宿泊が出来るんだよ。準備はして貰っている。離れだから、声も思いきり出しても良いよ。ただ、仲居がここを片付けるまでは、我慢しなければならないけれどね」

 小松はくすりとイタズラっぽく笑うと、ゆきを柔らかく抱き締めた。

「さあ、行こうか。奥に」

「……はい」

 ホワイトデイのデートではあるから、ゆきも当然のことながら、官能的な展開を予測していたのは確かだ。

 小松はふたりの荷物を持ち、奥に入る。そこは既に眠る支度がしてあった。

 布団が生々しくてドキリとした。

「ゆき、ここは温泉を引いているそうだよ。仲居が片付けるまでは、とにかくバスタイムになりそうだね」

「そうですね……」

 ゆきは緊張し過ぎて、身体を震わせてしまう。身体の震えが恥ずかしくて、ゆきは更に真っ赤になってしまった。

「先にお風呂に入って来なさい。その間、少しだけ、仕事をさせて貰うから」

「は、はいっ!」

 ゆきは、カチコチになりながら、浴室へと向かった。

 

 こんな時にまで仕事に追い立てられるなんて、なんと因果なのだろうかと、小松は思った。

 小松はタブレット端末を使って、手早く仕事をする。

 これをしておけば、ずいぶんと楽になる。明日もきちんと仕事が滞りなく進むだろう。

 それに、仕事をすると、待っている間の、爆発しそうな気持ちと欲望を、何とか抑えることが出来る。

 ゆきが戻ってくるまで、小松は仕事に集中した。

 

 ゆきはお湯に浸かりながら、ドキドキが止まらなくて、どうして良いのかが分からなかった。

 プロポーズをされた。

 嬉しくて、堪らない。

 だが、今は恥ずかしい。

 肌が敏感になり、感じやすくなる。

 ゆきは肌を丁寧に触れて、更に滑らかにした。

 温泉のお湯であるから、艶やかになってくる。

 綺麗になれような気がした。

 お風呂から上がると、小松が仕事をしている最中だった。

 この時間を作り出すために、相当、頑張ってくれたのだろう。

 ゆきの姿に気付いて、小松はこちらを見た。

「あがったの?」

「はい」

「じゃあ、これで、仕事は片付けるよ」

 小松は素早くタブレット端末を片付けると、何事もないように、浴室へと向かった。

 ゆきはひとりになり、ドキドキせずには、いられない。

 このようなシチュエーションは何度もあった。だが、何度あっても慣れるものじゃない。

 小松と婚約をする間柄だというのに、いつまで経っても、馴れることがない。

 ゆきは恥ずかしくて、真っ赤になる。

 まだ、なのに。

 いつも、こうしてその時を待つ時間が恥ずかしかった。

 ゆきが甘く緊張している間に、小松がお風呂から出てきた。

「ゆき」

「は、はいっ!」

 名前を呼ばれて、ゆきは思わず直立不動になる。

「何、緊張しているの?」

「慣れなくて……」

「もう、何度もこうしてきたでしょ?私と結婚したら、毎日、こうして抱くよ。だから、妙な緊張は捨てなさい……」

 小松は甘い笑みを浮かべると、ゆきの手を握り締める。

 しっかりと握り締めて貰うと、小松が離さないでくれるのだと、信じられた。

 いつのまにか、食事の後片付けもされていて、ふたりきりだ。

 気兼ねすることもない。

 ふたりだけの空間にいるのと、同じことなのだと、ゆきは思った。

 綺麗に敷かれた寝具に寝かされる。

 ふと小松が、ゆきを真っ直ぐ見つめた。

 小松は、左手薬指を取ると、そこにくちづける。

 ゆきは、自分のものなのだと言うことを、小松が宣言嬉しかった。

 小松は、躊躇いを焼き尽くすような口づけを、ゆきにしてきた。

 熱い、熱いキスに、全身が一気に熱を帯びる。沸騰するような熱に、ゆきはこのまま蕩けてしまっても構わないと思った。

 ゆきは、発火してしまうのではないかと思う熱波に呑み込まれた。

 小松と舌と舌を絡ませながら、ゆきは熱情に溺れてゆく。

 このままどうにかなってしまうのではないかと思うほどの熱を感じた。

 口腔内をたっぷりと愛撫されると、お腹の奥が鈍く疼く。腰がしびれて、身体が小松を求めているのは明らかだった。

 ふたりの唾液が絡む音を響かせながら、何度も、何度もキスをした。

 唇を離した後、ゆきは甘い吐息を溢す。

 小松は、ゆきに艶然とした笑みを浮かべた後、首筋に唇を寄せてきた。

 「君とこうするのは久々だからね。たっぷり愛してあげるよ……。夜は長いのだからね……」

 小松はくすりと笑うと、確かめるように潤んだ秘裂に指先を伸ばした。

 触れられた瞬間、ゆきは身体の奥から潤みを滲ませる。

「……期待しているの?こんなにして」

 小松は楽しげに囁きながら、水音を響かせた。

 小松に中心を触れられるだけで、ゆきはこのまま蕩けてしまうのてまはないかと、思った。

 触れられるだけで、気持ちが良い。

 こうされるだけで、ゆきの身体の細胞総てに、緊張が走る。

 小松は、意地悪にもゆきから指先を離す。

 もっと触って欲しい。

 だが、口には出来ない。

 ゆきがもどかしい想いに呻くと、小松は婀娜めいた笑みを浮かべた。

「ダメ、お預けだよ。私は久し振りに君を抱くのだから、こうして君を味あわせて貰うよ」

 イジワルなのにイジワルじゃない艶やかな笑みを浮かべられて、ゆきはそれだけで身体から想いを溢れさせる。

 甘さが滲んで、どうしようもなかった。

 小松は、ゆきの首筋に唇をおしあてながら、柔らかな乳房に手をかける。

 多少、乱暴だと思うぐらいに揉みしだかれているのに、ゆきは気持ちが良いとすら思う。

 甘い拷問のような感覚に、理性を溶かしていった。




 ウシロ マエ ツギ